10万円の「お泊まりコース」を頼む高齢男性が本当に求めているもの
日本家族計画協会の調査(2020年)によると、60代男性の7割強が「セックスをしたい」と回答。また、山形大学医学部の研究により、異性への関心が低い中高年の男性は、早死にする傾向があることもわかった。そんななか、「60歳未満お断り」をキャッチコピーに掲げる風俗店が出現。“遊び慣れていない男性”が大半という同店の客は、どのように利用しているのか。本稿は、中山美里『ルポ 高齢者のセックス』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 「60歳未満お断り」 高齢者専用の風俗店とは “60歳未満お断り”のキャッチコピーを掲げる老舗の高齢者専用風俗店「こころあわせ」をはじめ、顧客を50歳以上に絞った「赤い糸」、障がい者・高齢者専用の「まごころ」など、数は多くないが高齢者専用としている風俗店が全国にある。 もちろん、全年齢層を対象にしているお店に高齢者が足を踏み入れてはいけないということはない。実際、シニア割引を取り入れるといった方法で、使いやすさをアピールする店は数多くある。しかし、高齢者の中には「一般の風俗は使いづらい」と感じる人も少なからずおり、そういう方のために専用風俗はある。 ところで、高齢者が風俗店をはじめとする性的なサービスを利用している……そう聞いたらどのように感じるだろうか。「へえ、そういうこともあるのかもしれないな」と思うかもしれない。 だが、実際に、自分の親が利用していると考えたらどうだろうか。「いい歳してやめてほしい」と嫌悪感を抱くだろうか。「悪い女に騙されているのでは」と心配になり、詮索するだろうか。それとも、「個人の自由だから、別にいいんじゃないの」と性の自由を尊重するだろうか。
他人の性生活だと冷静に受け止められることが、なぜか自分に近しい人になると感情的になってしまうことがある。 けれども、考えてみてほしい。高齢になるに従い、生活範囲は狭くなり、そして人間関係も年々少なくなっていくのだ。仕事を引退する、運転をしなくなり行動範囲が限られる、友人知人が亡くなっていく……。 新しい出会いや環境を自ら切り開いていくのは、高齢者に限らず難しいものだ。見つけた楽しみが「風俗」であっても、それは否定しがたいのではないだろうか。 ● 大規模調査で結論づけられた 「エロい男性は長生きする」 2023年3月に「異性への関心が低い中高年の男性は早死にする傾向がある」という調査結果が報道されたことがある。 山形大学医学部看護学科の櫻田香教授の研究チームが発表したもので、山形県内の7つの市で健康診断を受けた40歳以上の男女約1万9000人を対象とした、最大9年間の追跡調査から導き出されたものである。 調査は、異性への関心の有無の他、病歴や笑いの頻度、精神的ストレスなどについて質問し、死亡リスクとの関連を調べたものだが、これらのデータを分析したところ、異性に関心がないと答えた男性は9年間で9.6%が亡くなり、関心があるとした男性の死亡率の5.6%を明確に上回ったということだ。