米司法省がGoogleに「Chrome」売却要求……SEOはこれから「崩壊」するのか?
検索からのWebサイト訪問は本当に減るのか?
続いて、Webサイトのトラフィックについて見ていきましょう。 今後、生成AI検索が主流になっていくことで、検索からのWebサイトへの訪問は確かに減少することが予測されます。ただし、完全になくなることはないと私は考えています。 第1の理由として、生成AI検索で情報収集を完結させるユーザーが増える一方で、一定数のユーザーは複数の情報源を確認する傾向にあるため、ユーザーインタフェースの観点から、Webサイトへのリンクは残ると考えています。 第2に、Googleなどのプラットフォームは、独占禁止法や著作権問題をなるべく避けるため、参考元サイトのURLを明記し続けると予測されます。プラットフォーム側も、良質なコンテンツの継続的な提供がプラットフォームの価値を支えているため、Webサイト運営者との共存関係を維持する必要があります。 第3に、最新テクノロジーに対してやや保守的な日本人の検索習慣は、生成AIの「精度と信頼性」「使いやすさ」が向上したとしても、それだけでは簡単に変化しないと考えられます。 仮に検索習慣が大きく変化するならば、スマートフォンのデフォルト検索エンジンが生成AI検索に変更されるなど、デバイス側の大きな変革があり、多くのユーザーが一斉に使い始めるようなきっかけが必要でしょう。そうでない限り、変化は緩やかに進むと予想します。
「個人」と「企業」の二刀流でマーケティング戦略を
続いて、インフルエンサーの台頭、つまり信頼される対象が「企業」から「個人」へ移り変わることによってWebトラフィックが減少するのかどうか見ていきましょう。 結論として、「企業」よりも「個人」を信頼する傾向は、一般的に言われているほど単純ではありません。博報堂生活総合研究所の2021年の調査によると、20代の半数がSNSとブラウザ検索を同時に使用しており、インフルエンサーの情報だけでなく、企業のWebサイトも参照していることが分かりました。 また、B2Bの場合、特に大企業ではコンプライアンスの観点から「企業」としての信頼性を重視する傾向があります。「個人からの紹介」は受注率を高める可能性はありますが、企業が独自に持つ一次情報などのWebコンテンツは、リードジェネレーションにおいて重要な要素であり続けるでしょう。 つまり、「個人」への信頼は確かに存在しますが、「企業」の信頼性も依然として重要といえます。消費者や企業は、個人の意見と企業の情報を組み合わせて判断を下していると考えられます。この複雑な情報収集行動を理解し、両方のアプローチをバランスよく活用することが、効果的なマーケティング戦略につながるでしょう。