海外のレースより「有馬記念」で勝つ方が難しい 調教師・矢作芳人
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月21日放送)に調教師の矢作芳人が出演。競馬における調教師の仕事について語った。 【写真】有馬記念で勝利したドウデュース 鞍上でガッツポーズの武豊
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月18日(月)~12月22日(金)のゲストは調教師の矢作芳人。4日目は、日本の競馬会のレベルの高さと有馬記念について― 黒木)矢作厩舎にとって、初めての有馬記念で勝ったと伺いましたが。 矢作)ファン投票で選ばれる1年の総決算のような大きなレースなので、「有馬記念に出る」というのが目標ではあるのですが、なかなか縁がなく、2019年に初出走しました。 黒木)リスグラシューのときですか? 矢作)リスグラシューで初めて有馬記念に出走し、勝ったのです。 黒木)2005年に厩舎を開業なさってから、かなり時間が経ったのですね。 矢作)大事なレースですので、「勝てない馬は出したくない」という思いもありました。 黒木)海外制覇なさっている厩舎であっても。 矢作)それくらい、いまの日本競馬のレベルは高いのです。海外で勝つこと以上に、日本のダービーや有馬記念というレースに勝つことは難しい。 黒木)みんな、しのぎを削っているわけですね? 矢作)まずは出すことが目標で、勝つのはとてもハードルが高いです。有馬記念という目標に向けて、日本のホースマン全員が頑張っています。そのようなところを見ていただけたら嬉しいです。 黒木)有馬記念は、3回くらい競馬場に行きました。歓声が気持ちよくて。 矢作)当たったことはありますか? 黒木)ないです。でも、すごく感動するのですよね。 矢作)「これぞ年の瀬」という。 黒木)「最後!」という感じですよね。 矢作)その盛り上がり、熱狂がまた私たちの力にもなっています。
黒木)ジャパンカップで引退した馬がいますよね? 矢作)世界最高賞金レースのサウジカップを2023年に勝ったパンサラッサが、ジャパンカップで引退しました。 黒木)やはり調子を見て引退を決めるのですか? 矢作)そうですね。足や全体の状態です。そして、その馬は来年から種馬になりますので、引退の時期を見ていたところはあります。 黒木)ドバイ、香港、アメリカなど、海外のビッグレースで勝ち、歴史的偉業を成し遂げていらっしゃいますが、地方から中央、中央から海外という夢が叶っていますよね? 矢作)ツイてる男なのです。周囲の人、そして馬に本当に恵まれています。ただ1つだけ思うのは、人に対しても馬に対しても「自分の思いが伝わっているのかな」ということだけは感じていますし、その思いだけは忘れないようにしています。 黒木)自分の思いを伝えるということですか? 矢作)「勝つのだ」という強い決意です。スタッフもその思いを背負って頑張ってくれますし、馬も応えてくれるといういい循環になっていると思います。 黒木)これからまた、世界で活躍するような馬を育てられるのですね? 矢作)2023年の2歳馬、これは2024年にダービーを走る馬なのですが、その世代に多数いい馬がいます。 黒木)2024年の春ですね。 矢作)そして2024年の暮れの有馬記念には、1頭と言わず2頭も3頭も出せるようにしたいと考えています。 黒木)東京と関西で右回り、左回りと違いますが……。 矢作)そうですね。ただ、馬は一般的には左回りが得意なのです。 黒木)そうなのですか? 矢作)人間の陸上競技のトラックと同じで、何も問題なければ左回りが得意です。右回りは調教していくということですね。 黒木)難しいのですね。面白いです。 矢作)特に有馬記念が行われる中山競馬場は小回りの右回りなので、コースに適応する馬を育てなければいけませんし、そこに合った馬を出す必要があります。 黒木)短距離・長距離だけではないのですね。そのような目で私も競馬を楽しみたいと思います。