これぞヘビー級醍醐味!WBC王者ワイルダーが狡猾罠を張り右ストレート一発でオルティスを逆転KOしV10達成
ボクシングのWBC世界ヘビー級王者のデオンテイ・ワイルダー(34)が23日(日本時間24日)、ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで、元WBA世界ヘビー級暫定王者のルイス・オルティス(40、キューバ)と対戦、7回2分51秒、衝撃的な右ストレート一発でKO勝利し10度目の防衛に成功した。故モハメド・アリに並ぶヘビー級では歴代4位の防衛記録となった。ダウンの応酬となった昨年3月の試合の因縁再戦。ワイルダーの戦績は43戦42勝(41KO)1分となり、試合後、その唯一の引き分けとなった元3団体統一王者、タイソン・フューリー(31、英国)との再戦を希望した。ワイルダーは、この試合でFOXスポーツのPPV(有料放送)の配分を含めて約2000万ドル(約21億6000万円)を手にする予定となっている。
7ラウンドに右ストレート一発
その時を待っていた。7ラウンド。残り10秒を示す拍子が鳴った直後だった。左手を伸ばし距離をはかっていたワイルダーが右ストレートを一撃。オルティスは左ガードをあげていたが、そのインサイドからバズーカ砲をズドンと顔面にぶちこむと、ロープ際で挑戦者は背中からドタっと崩れ落ちた。オルティスは四つん這いになって立ち上がろうとしたが、レフェリーは10カウント。2分51秒の衝撃的なクライマックスだった。 序盤は、サウスポースタイルのオルティスのペースだった。スピードの乗った左のロングフックを叩き込み、ボディにもパンチを散らす。そしてワイルダーの右ストレートの打ち終わりに左のカウンターを狙っていた。 ワイルダーは左に廻りながらジャブは出すが、伝家の宝刀の右ストレートは、まるで故障でも負っているかのようにほとんど打ち込まない。KOを期待していた場内からはブーイングが出る始末。 6ラウンドまでは、オルティスがポイントで大きくリードしていた。3人のジャッジがワイルダーを揃って支持したのは6ラウンドだけ。58-56、59-55が2者という一方的な途中採点だった。 だが、これはワイルダー陣営が張った罠だった。ワイルダーのチーフトレーナーのジェイ・ディーズと、マーク・ブリーランド・トレーナーの練った作戦は“キングコング“を後半戦に引き込むというもの。壮絶なダウンの応酬となった昨年3月の試合でも、38歳のオルティスは明らかに後半にガス欠していた。そこにチャンスがあると踏んだ。 ディーズ・トレーナーが言う。 「オルティスはラウンドが進むにつれて弱くなる。だが、序盤は危険だ。右に左のカウンターを合わせてくる。序盤に殴り合いをするのは、バカげたアイデアだったのだ。人々がブーイングすることなど気にしていなかった」 7ラウンド。その時がきた。 The Bronze Bomber(銅の爆撃機)が炸裂。たった一発でオルティスが積み上げてきた6ラウンドのポイントは消滅した。 米のボクシングデータの専門機関によるとトータルの強打はオルティスが102発を放ち28発的中だったのに比べて、ワイルダーのそれは、およそ半分の54発の17発的中だった。ジャブの数はワイルダーが130発(17発的中)で、オルティスが77発(7発的中)だったから、いかにワイルダーが6ラウンドまで左だけで様子を見ていたかがわかるだろう。