母の「ひと言ヤクルト日記」を読み返して思う、野球の楽しみ方の奥深さ【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第95回
あけましておめでとうございます。新春はやってきたけれど、球春の到来はまだ先のこと。2024年シーズンを「来シーズン」と呼ぶのか「今シーズン」と呼ぶのか、ほんの少しだけ迷う季節が今年もやってきました。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー みなさんの今年の目標は何ですか? 新たな年を迎えると、何か新しいことを始めたくなるのが人間の常。私も「今年こそ毎日欠かさず日記をつける!」と意気込んだ1月1日が、果たして何度あったことか(笑)。今回はそんな「日記」にまつわるお話をしたいと思います。 『2020年10月1日(木)。横浜スタジアムでDeNA戦。2-0でヤクルト勝利。雨で中断あり。エスコバーファンプレー。清水昇素晴らしい』 『2020年10月30日(金)。巨人戦@東京ドーム。3-3で引き分け。巨人リーグ優勝。追いついて、追い越せず』 この日記は、毎年"三日坊主"で終わってしまう私ではなく、母が書いたものです。 お読みいただければ事理明白。最愛の母こそが、私をヤクルトファンとして育て上げてくれた言わば"第一人者"なのです。母は深い野球愛と鋭い観察眼で、私に野球の魅力を教えてくれました。 大のヤクルトファンである母は、自身の日記を毎晩開き、その日のヤクルトの試合結果とともに「ひと言」添えるのを習慣にしています。母の日記は日常を切り取るものではなく、もはや野球のことしか書いてありません。 2016年頃から欠かさず書くようになったという「ひと言ヤクルト日記」は、今年で9冊目。当初は、勝敗の白星・黒星と、その日の対戦相手、スコアくらいしか記録していませんでした。当時のヤクルトといえば、2018年こそリーグ2位だったものの、それ以外はほとんど下位に沈み、辛酸をなめるシーズンが続いていました。 ただ、長いシーズンですから、希望を持てる敗戦もあったのでしょう。「負けたけど、ここは良かったよね」を探すべく、徐々に試合の寸評が加えられていきました。 『2020年11月7日(土)巨人戦@東京ドーム。2-6で負け。村上宗隆は2打席連続HR。小川泰弘は岡本和真に2打席連続でHRを打たれ規定回数に1回満たず降板。一方、神宮ではドラ1の木澤尚文が登板。負けたが力強いピッチング』 この日は、1軍マウンドの小川泰弘投手の悔しいピッチングを嘆きつつ、神宮球場で行なわれた2軍の試合も欠かさずチェック。2軍戦での木澤尚文投手のピッチングに期待を抱いたようです。 『2020年10月10日(土)広島戦@マツダ。0-3で負け。森下暢仁くん打てず。初回ノーアウト満塁だったが......』 『2020年10月11日(日)広島戦@マツダ。4-7で負け。後半追い上げるも......。五十嵐亮太、引退発表』 『2020年10月13日(火)DeNA戦@神宮。1-8で負け。点取れず。元気なのは初回だけ。リリーフ長谷川宙輝くん5失点。いけんね......』 『2020年10月14日(水)DeNA戦@神宮。6-9で負け。8回裏に5得点も時すでに遅し。石川雅規さん7敗目』 『2020年11月5日(木)阪神戦@甲子園。7-8で負け。初回、2回で7得点も、追いつかれ、追いこされる。情けない試合展開』 2020年の日記を紹介してきましたが、なんてつらいシーズンだったんでしょう!「ここが良かった」を探すどころか、目を覆いたくなるような試合ばかり。「いけんね......」という母の故郷・島根県の松江の方言に、当時の切ない表情まで浮かんできます。