日本人28歳が英2年目で苦境「とにかく辛抱」 大怪我→出番減も「いたら厄介」と評価…逆襲を見据える心境【現地発コラム】
「やり続けていかないと」 苦しい状況でも見据えるスタメン奪回
3バック採用となると、スタメン復帰を狙う坂元にとっては分が悪い。ハードワークも欠かさない和製ウインガーだが、指揮官がウイングバック起用に踏み切るとは思えない。あくまでも、適所である前線で敵を脅かし続ける起用法を意識していると見受けられる。この日も、交代したチームメイトは新センターハーフのジャック・ルドニだったが、投入された持ち場は2トップの背後だった。 坂元自身も、「得点、アシストのところは一番関わっていかなきゃいけない。試合に絡めれば、流れを変えていける自信はある。チームに勢いを与えるという面では、またスタメンで使ってもらえたらできる自信はあるので」と言っている。 では、下位対決で1ポイント獲得にとどまり、また1つ順位を下げてしまった状況でも、4バックへのシステム変更があるのか? 可能性は高いと見る。敵も3バックだったQPR戦、右ウイングバックで先発したミラン・ファン・エバイクは、チームメイトの怪我で前半9分から相手の左ウイングバックとしてピッチに立った斉藤との1対1で攻守に苦戦した。そのファン・エバイクが、坂元と並ぶ昨季の2大新戦力と言われた理由は、両者が右SBと右ウインガーとして結成した縦のコンビにある。 もっとも、坂元との呼吸の良さといえば、本職は左ウインガーだが、この日は2トップの一角で先発したハジ・ライトと、終盤にベンチを出たCFのエリス・シムズだろう。昨季の3者は、リーグ戦だけで合わせて36得点をチームにもたらした。第11節終了時点での今季は、QPR戦で先制ゴールを決めたライトが、2得点でチーム内リーグ戦得点王という状態だ。 昨季前線トリオの中でも、最も重要な一駒とまで言われるようになっていた坂元。本人は、「とにかく辛抱して、試合に絡んで結果を残せるように練習からやり続けていかないといけない」と、大怪我を克服したあとも歯を食いしばり続ける覚悟だ。 最後に、控え室に戻る前の取材対応へのお礼とともに「誕生日おめでとうございます」と伝えると、28歳になったウインガーは、汗を拭いて「ありがとうございます」と微笑んでから、勝ち損ねた一戦でのベンチスタートに「微妙な誕生日でした」と苦笑いしていた。だが、再びコベントリーのキーマンとしての坂本が誕生する日も遠くはないはずだ。 [著者プロフィール] 山中 忍(やまなか・しのぶ)/1966年生まれ。青山学院大学卒。94年に渡欧し、駐在員からフリーライターとなる。第二の故郷である西ロンドンのチェルシーをはじめ、サッカーの母国におけるピッチ内外での関心事を、時には自らの言葉で、時には訳文として綴る。英国スポーツ記者協会およびフットボールライター協会会員。著書に『川口能活 証』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『夢と失望のスリーライオンズ』、『バルサ・コンプレックス』(ソル・メディア)などがある。
山中 忍 / Shinobu Yamanaka