岡咲美保「このためにならもっと頑張れる」活動の原動力:インタビュー
声優・アーティストの岡咲美保が8月7日、4thシングル「ハピメモ」をリリース。岡咲はアニメ『転生したらスライムだった件』で主演・リムル=テンペスト役に抜てきされ、2020年に第14回声優アワードで新人女優賞を受賞。『アイドルマスター シャイニーカラーズ』で市川雛菜役として出演したライブイベントで高い歌唱力が脚光を浴び、2021年9月にアーティストデビュー。 【写真】岡咲美保、撮り下ろしカット シングル4枚目となる本作のテーマは、“夏をめいっぱい感じられる曲”。表題曲は、8月10日に開催される2ndワンマンライブ『Miho Okasaki 2nd LIVE 2024 ~ハッピーメモリー~supported by animelo』のために作られた、ライブで盛り上がる爽やかな夏ソングだ。また、カップリングには岡咲のキュートさが詰まった「夜ふかしダンス」を収録。インタビューでは、最新作「ハピメモ」の制作背景から、人生で一番ハッピーだった思い出、声を生業としている岡咲に、自身の声の印象について語ってもらった。 ■ステージから見える景色を想像しながら歌った ――デビュー曲は「ハピネス」で、今回の「ハピメモ」も“ハピ”がついたタイトルです。もしかして繋がりはありますか。 少し意識しました。「ハピネス」という楽曲はDECO*27さんに書いていただいた曲だったので、私が決めたタイトルではなかったんです。今回の「ハピメモ」は自分でタイトルを決めさせていただいたんですけど、歌詞の<Oh! Summer day Oh!ハッピーメモリー集めて>がすごく好きだったので、“ハッピーメモリー”をライブタイトルにして、曲タイトルも「ハッピーメモリー」にしようと思っていました。でも、もっとキャッチーで言いやすくて、あまり聞いたことがないようなタイトルにしたいと思いました。それで、デビュー曲が「ハピネス」でカタカナ4文字だったので「あ、いいじゃん! 岡咲美保っぽいし、今まで頑張ってきた道っぽい!」と思って、いろんな要素もあり、タイトルは「ハピメモ」に決めました。 ――やはり繋がっていたんですね。「ハピメモ」はライブに向けて作られたとのことですが、レコーディングはどんな感じに進めていきましたか。 2ndワンマンがこんな感じだったらいいなと想像しながらレコーディングしていました。コール&レスポンスができるところもたくさんあります。<チェックメイト 君の思いを>と歌うところで<キャッチしたよ>と、私の声が合いの手のように入っているのですが、ライブではきっとここでみんなの声が聞こえるんだろうなとか、私はそのとき手を振ったりしているのかな、とか色々想像していました。ブースで1人で歌っているのですが、ステージから見える景色を想像しながら歌った感覚がありました。 ――いろいろ想像しながらレコーディングしていたんですね。 デビュー曲の「ハピネス」の歌詞で<きみと叶える妄想が 退屈を特別にするんだよ>というのがあるのですが、想像する世界がすごく好きなんです。非現実的なことを形にするアニメもそうですけど、そういう世界を夢見るのが好きなので、レコーディングの時もいろいろ想像しながら歌っています。 ――今回の歌詞からどのようなことを感じましたか。 とにかく明るくて楽しい歌詞なんですけど、この瞬間が永遠ではなく過ぎ去ってしまうことがわかっているんだろうなと感じました。Dメロの<もう、ちょっと 時間が早い あと、ちょっと ここにいさせて 何度でも君はキラキラ輝く だからね>も楽しい時間というのは、あっという間で、何時間も経っていたりとか、終わりがわかってるからこそ、貴重だしすごく大切に思える。その価値をすごく分かっている歌詞だなと思いました。 ライブとかも時間が有限だからこそ、ここに思いを込めてきたみたいな感じで全力を注げると思います。「ハピメモ」もそういうものを感じたので、ただノリでここまで楽しくなったというよりは楽しい時間にしようと、みんなが愛着を持って楽しんでいるんだなって。 ――岡咲さんは、ライブで歌っていると時間が経つのが早く感じますか。 すごく早いです。1stワンマンでは、持ち曲全部、23曲ぐらい披露したんですけど、最後の方は時間が過ぎるのがより早く感じました。時間が加速していく感じで、ライブというのは不思議だなって。リハとかやっているとより感じますし、みんながいてこそのライブだなと思います。 ――<もう、ちょっと 時間が早い>っていうところはポイントになってきますね。 はい。自分も実体験でライブとか、すごく好きな友達とカフェでずっと喋れるとかそういうのもわかるし、とても共感できました。自分がまさに今ライブを控えているというところで、歌っている時から「ハピメモ」のような時間を過ごせたらいいなと思っていました。時間が早く感じられるような2ndワンマンにできたら嬉しいです。 ■このためにならもっと頑張れる ――「ハピメモ」とかけて、人生で一番ハッピーな記憶、思い出はどんなものがありますか? 生まれてきた意味とか、自分がこの人生で成し遂げたいこととか、スケール大きいのですが、そういうことを考えること多くて、こういった質問がきたら、「オギャーって生まれた時です」って言おうと思っていて、そういう人生を過ごしたいんです。その中で1stワンマンが本当に幸せで、とてもハッピーな思い出です。念願の1stワンマンライブで、すごく緊張はしていたけど、私のことを観に来てくれた方だけが集まっている、という安心感もやる前からありました。実際ステージに立ってみて、無条件に愛情を浴びている感覚がありました。皆さんからの声援とかもあるんですけど、空間が持つ雰囲気みたいなのがすごく独特で、自分が中心にいるという経験が初めてだったので、このためにならもっと頑張れるなってすごく思いました。 ――活動の原動力の一つになっていて。 そうなんです。例えば活躍する歌手の方とかを観て「いいな」と思ったり、声優さんのアフレコを観て憧れたり、きっかけはそこだったんですけど、もうそれだけでは突っ走れないと言いますか、この世界に足を踏み入れて知った大変さも実感しています。でも、その大変な時間もワンマンライブにつながるならいいなと納得したといいますか、頑張る先の景色がちゃんと見えた感じがありました。安心感もあり、この場所なんだなってすごい思ったんです。その時間の説得力がすごくてハッピーでした。 ――それだけ充実していたとなると、ライブが終わった後の余韻もすごかったのでは? はい。自宅に帰ってきてからも、心は横浜の会場にいました(笑)。身内だからというのもありますが、家族やキングレコードのスタッフさんも「本当にいいライブだった」と言ってくださって。頑張ってきた仲間だからこそ、特別だと感じた日でした。 ■行きも帰りもずっと喋っていたMV撮影 ――さて、「ハピメモ」のMVなのですが、撮影エピソードなどお聞きしようと思ったのですが、7月4日にYouTubeで配信された「ハピメモ」配信記念番組を観てほしいなと思いました。岡咲さんがMVを観ながら気になるところで止めていくスタイルで、とても面白かったです。 ありがとうございます! 台本には、そのコーナーは「10分間」と書いてあって、最初は「無理、10分ももたせられない」と思っていたんです。でも、蓋を開けてみたら20分もやっていました(笑)。 ――あはは(笑)。MV撮影のオフの時間はどのように過ごされていたのでしょうか。 移動は片道 2 時間弱あったんですけど、私のチームはみんなすごく仲がいいので、朝早かったのにかかわらず行きも帰りもずっと喋っていました。 ――喋り続けていて、喉は大丈夫なんですか? 大丈夫なんです(笑)。どちらかというと体力、気力の問題なんですけど、何の話をしていたのか思い出せないくらい、生産性のないお話をたくさんしていました(笑)。 ――MVは少女漫画みたいなコマ割りになっていて面白いですよね。 初挑戦でした。コンセプトの話を聞いたときに、自分の作品でどんな雰囲気になるのか想像がつかなくて。MVの中で私が転校するというシーンもあったり、コミック調なのでポップで見やすかったり、歌詞もスッと入ってくるし、すごく面白いなと思いながら撮っていました。 ■何回もリピートして聴いてほしい「夜更かしダンス」 ――カップリングの「夜更かしダンス」は、sajiのヨシダタクミさんが作詞作曲ですね。レコーディングはいかがでした? ヨシダさんからは、チームのやりたいように解釈して、自由に歌ってもらえればと言っていただいていたので、リラックスして歌えました。歌詞にハートマークがついてるところもあって、<偽りのクラスのヒロインがほら、完成□>(□は白抜きハートマーク)とか、<素直な女の子が良いんでしょ>など、ちょっとあざといふりをしつつも、全体的には等身大の自分が隠しきれてない、擦れていないところが共感できました。レコーディングではいろんな表情を出しつつも、割とフラットなテンション感で、歌った感覚があります。 小悪魔的な部分の要素は入れつつも、全体的に独り言感のある曲で、別に誰かの背中を押さなくてもいいし、自分の背中も押さなくてもいい。駄弁っている、愚痴ってるみたいな雰囲気が作品になるというのは、ヨシダさんの技量だと思います。 ――女性のイメージをうまく捉えていますよね。 そう思いました? 私は逆に男性から見た女性ってこういう感じなんだなって思いながら歌っていました。もちろん共感しましたし、歌詞って普段自分が生活している中で引っかかったことから生まれるものだと思うので、「もしかしたらヨシダさん、そういう思い出があるのかしら 」って想像したり(笑)。そこに寄り添いながらも自分の楽曲として、出していく感じが楽しかったし、とてもおもしろかったです。 ――サビ前の<(Check it out!!) >のニュアンスがすごくいいなと思いました。 ありがとうございます! これは“チェケラ選手権”がありました。5 つくらい録ったのかな? その中からスタッフみんなの投票で選ばれた<(Check it out!!) >なんです。かっこいい感じの<(Check it out!!) >や感情をあんまり入れない、音楽の中に自然に溶け込むような感じとかいろいろ試しました。声の仕事しているからこそ、この楽曲に限らずセリフっぽいところは何回か録ったり、ラストサビ前の吐息の部分とか、落ちサビもそれぞれ選手権を開催していました。 ――最後の笑い声も印象的だったのですが、これはどのような気持ちで入れられたのでしょうか。 デモには入ってなかったのですが、何回か歌っていて、最後に声を入れたいと思い、お願いしたところ、「入れていいですよ」とお返事をいただいたので、これも何パターンか録りました。小悪魔チックにも聞こえるし、私はこうして行くんだって割り切ったようにも聞こえるようなイメージです。入れようと思った理由は深い意味というよりも、最初はサウンド的にアクセントがほしいなと思ったからなのですが、何回もリピートして聴いてほしい曲だなと思い、意味深な感じもあり微笑んでみました。結局主人公はどう思っているのか、正解はわからないのですが、明確な答えはでなくてもいいなと思っていて、曲のコンセプトにも合っていていいなと思いました。 ――ところで、「ハピメモ」のジャケット写真に時計が置いてありますが、この時計の針が指す時間の意味ありますか? 通常盤の時計の針は、長針の8分、短針の7時で、シングルの発売日8月7日になっています。初回盤の方はシンプルにおやつの時間です(笑)。なので、横にケーキを置いてみました。 ■感情の引き出しをもっと開けたい ――いまご自身の声はどのように分析されていますか。 声優になってから、自分の声が変わったなと思っていて、マイクで録ることを意識しているからか、キャッチーな声になってきていると思います。元から出せる声なのですが、どこかデフォルメされてきたような感覚があるんです。過去にアナウンスをやっていたのですが、その時は「声、作っているんですか?」と聞かれるくらい、お姉さんっぽい声を意識して作っていたのですが、声優になってから自分らしさを爆発できるようになりました(笑)。養成所の時代に講師の方から、「可愛らしさもありつつ、どこか野太い声、あなたは歳を取っても声優で食べていけそうだね」と言っていただけたことがすごく嬉しかったんです。私もその言葉を胸に可愛いらしい響きも大事にしつつ、どこかエネルギッシュといいますか、自分の味、個性を残せたらいいなと思っています。また、歌だと全然変わってくるのですが、お芝居だとパンチの効いた女の子や男の子役が最近多いなと感じています。 ――では、歌声はどんな風に感じていますか。 昔から変わってないんですけど、歌声の響きがフラットなので、どちらかというと和の雰囲気のある曲とか、「夜ふかしダンス」のようなちょっと湿度のある曲やバラードの方がナチュラルになじむ声だなと思っています。それもあってアーティスト活動で、明るいポジティブな曲も歌わせていただけていることが嬉しくて。また、声の引き出し、感情の引き出しをもっとガバっと開けたいなと思っていて、曲ごとにその世界に浸りたいなと常に思っています。 ――最後に、8月10日に2ndワンマンライブ「Miho Okasaki 2nd LIVE 2024 ~ハッピーメモリー~supported by animelo」が開催されますが、どのような気持ちで臨みたいですか。 1stワンマンは、「岡咲美保です!」という感じで、今までの軌跡、全曲を披露するというテーマで頑張らせていただきました。今回は新曲も増えたので、セットリストも楽しみにしていただきたいですし、夏一番の思い出が8月10日の文教シビックホールでのライブになったらいいなと思っています。私は割と緊張しいではあるんですけど、来ていただいた皆さんのパワーに、「私も負けないよ!」というところをライブで見せたいです! (おわり) Styling:細田真弓 Hair&Make up:楢林ミナコ(フリンジ) 衣装:MAJESTIC LEGON