「新幹線のお医者さん」のドクターイエロー、現行車両でその活躍にいよいよ幕? 2020年代後半で引退と考える3つの理由「鉄道なにコレ!?」【第52回】
同僚が目撃したこの装備は、N700系の試作編成に取り付けられており、屋根にあるパンタグラフのすり板が架線にスムーズに当たっているのかなどの動作状態を確認するためのライトだ。N700系向けに開発されたパンタグラフの状況を確認するために脇にあるカメラで状態を撮影しており、よく見えるようにライトで照らすようにした。 ドクターイエローのように線路や架線などの状態を検査できる機能は、N700Sの営業用車両の一部編成も備えている。これらの編成では12号車のパンタグラフ脇には架線の摩耗や高さといった状態を確認するシステムを搭載している。 このシステムがN700系の試作編成と異なるのは、赤外線照射光を架線に当て、返ってくる赤外線反射光を受けてカメラで計測しているため、上から見ても「光っていることが分かる状態ではない」(JR東海)という点だ。 他に線路の形状や線路間の幅、高低差、線路に流れている自動列車制御装置(ATC)の信号なども計測できる。検査が軌道に乗って〝ドクターイエロー化〟すればドクターイエローのレゾンデートル(存在意義)が薄れ、引退させる理由の1つになるだろう。
▽理由2:ドクターイエローが〝足手まとい〟にも JR東海は2019年8月、N700Sの一部編成に検査機能を導入するのはドクターイエローに加えて「より高頻度に設備の状態把握を行い、タイムリーに保守作業を行えるようにするため」と説明していた。 裏を返せば営業用車両を使えば「より高頻度に」線路や架線などの状態を検査でき、調べた結果を反映して「タイムリーに保守作業を行える」利点が生じることになる。 実際、JR九州が運行する九州新幹線(博多―鹿児島中央間)と、武雄温泉駅(佐賀県武雄市)と長崎駅の間で22年9月に部分開業した西九州新幹線では検査専用車両を導入せずに安全安定運行を実現している。 一方でドクターイエローの運行は、新幹線の高速・多頻度運転の〝足手まとい〟になる恐れもある。それが現行車両を引退させると考えている2つ目の理由だ。 ドクターイエローの最高時速が270キロと、東海道新幹線の営業用車両の最高時速285キロより遅い。さらに差が開くのは最高時速が300キロに達する山陽新幹線で、現在は主に「こだま」で運用しているひかりレールスター700系の最高時速285キロよりも遅い。