新型スズキ・フロンクスは価格以上の価値がある! 最新コンパクトSUVの意外な実力とは
“バリューフォーマネー”
エンジンは数値からも分かる通り、パワフルというのでない。すこしまろやかな加速性、ハンドルを切ったときの操舵性、それによく動く脚まわりによる快適性、すべてが共通したマイルドさで仕上げられている印象で、そこが大きな魅力だ。 高速での加速性は、いまひとつ。そこはエンジン出力の数値が物語っている。そのときはパドルシフトでギヤを落とせばよい。5速と6速がけっこう近接しているので、こういうときに使いやすい。 もっと活発な走りを、というときには、ドライブモードでスポーツモードを選べばよい。明確にキャラクターが変わるのがおもしろい。 ただし、2500rpmを超えたあたりからエンジン音は大きくなる。高速でも高い速度になると、エンジンルームとタイヤハウスからの音が大きくなる。市街地を走っている分には、前後席間の会話の明瞭度も技術者が苦心しただけあって、かなり高いので、ある程度の割り切りは必要かもしれない。 シートの出来はよく、クッション性もからだのホールド性にすぐれているので、乗り心地がよい。高速でも路面からの突き上げをていねいに吸収する。デザイナーがこだわったという2色づかいの表皮を使ったシート。しっかり役目を果たしてくれているのだ。 もうひとつ、びっくりしたのは後席のレッグスペース。やたら広い。身長175cm超の人間が脚を組んでもまだ空間が余る。ファミリーを想定したというだけある。ただ、あまのじゃくな見方をすると、ここまで広くしなくても、そのぶん容量210リッターの荷室にスペースを分けてもよかったのでは? と、思わないでもないけれど。 フロンクスのラインナップは、前輪駆動車が¥2,541,000、4輪駆動車が¥2,739,000とシンプル。乗ってみると、このクルマ、“バリューフォーマネー”とよくわかる。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)