摂食障害の初期症状と行動パターンをご存じですか? 心理的な兆候を医師が解説
どうして摂食障害になるの?
編集部: どうして摂食障害になるのですか? 酒井先生: 現時点ではそこがよくわかっていません。摂食障害は、明確に原因を断定できるものではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症します。しかし、まず知っておいてもらいたいのは、摂食障害は「ただの大食い」や「極端な少食」とは全く異なる概念だということです。 編集部: いくつかの要因には、例えばどんなものがありますか? 酒井先生: ストレスなどにより、セロトニンやドーパミンなど脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こりやすくなります。 ほかには、思春期の女性に特に発症しやすいとも言われていますし、遺伝的要因もあるといわれています。とくに、繰り返しダイエットを行うことで、摂食障害の発症リスクは上がると言われています。 編集部: そうなのですね。 酒井先生: はい。さらには、家庭環境や対人関係、社会的なプレッシャーなどがきっかけで発症する方もいます。モデルやバレリーナといった、体型や体重が重要視される職業に就いている方にも見受けられます。
「もしかして…?」摂食障害のサイン
編集部: 摂食障害になりやすい人というのはいますか? 酒井先生: 「意思が強い人」や「美的な意識が高い人」などは、少し注意が必要です。 私はよく「成功したダイエットは過食症の第一歩」と伝えることがあるのですが、「食べたい欲求を必死に我慢したらダイエットに成功した」といった成功体験が、摂食障害を引き起こすこともあるのです。 編集部: 摂食障害を周りが早期に気づいてあげるにはどうしたら良いですか? 酒井先生: 急激な体重の変化や先述の症状がみられた場合はもちろんですが、トイレの回数の増加、歯の形の変化(歯のエナメル質減少による)、冷えや生理不順の訴えなども摂食障害のサインの可能性があります。 編集部: 摂食障害が疑われた場合、どうすれば良いのでしょうか? 酒井先生: 現時点では明確な効果が立証されている治療法は確立されていない状態ですが、それでも程度にかかわらず、可能であれば一度専門家に相談することをお勧めします。 過食症については、効果があるとされているお薬がいくつかありますが、いずれも日本では認可されておらず、扱っている医療機関はごくわずかです。過食症に悩んでいる人は、それでも探してみる価値はあると思います。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージをお願いします。 酒井先生: 「摂食障害は心が弱い人がなるもの」というイメージがあるかもしれませんが、どちらかというと「意思が強く、一度決めたらやり通す!」という人にリスクが隠れています。 まずは「無理なダイエットはしない」「一度成功したからといって何度も繰り返さない」といったことを意識してもらえたらと思います。 また、周りに摂食障害の人がいたら「もっと食べなよ」「食べ過ぎじゃない?」などとは言わず、本人が辛そうな時に話を聞いてあげるといった関わり方をしてもらえたらと思います。