上海市、子育てに理解のある職場環境の奨励策・中国
【東方新報】中国・上海市は雇用主に対して、「子育てに理解のある職場環境」の整備を奨励し、仕事と家庭の両立を支援する措置を講じるよう促している。 上海市人力資源社会保障局が20日に発表した試験的プログラムによると、「子育てにやさしい就業ポスト」には柔軟な就業時間や勤務形態が求められ、その応募者の条件は12歳以下の子供を持つ親であることを条件としている。 同局が雇用主に求める職場環境は、柔軟な始業・終業時間、リモートワークや在宅勤務、柔軟な休暇制度およびこれらに対応できる業績評価方法など柔軟な勤務体制で、従業員が仕事と子育ての両立をしやすいような職場環境の整備だ。 市政府の関係部門は、プログラムの第1段階として、製造業、接客業、フードサービス、家事代行サービスといった従来の業界およびプラットフォーム経済、デジタル経済、文化経済、創造経済、高齢者ケア経済など新興分野の業界にそれぞれ指導を行い、このような就業ポストの雇用機会の増加を目指している。またこの取り組みの支援のため、これらの業界の雇用主リストを作成するとしている。 また、労働組合に対しては、授乳室の設置促進や夏休み・冬休みプログラム、放課後児童学習クラスの運営など、子育てにやさしい職場づくりを支援する役割を担うよう求めている。 上海市と類似した政策は全国の様々な地域にも存在するが、その就業ポストは女性応募者のみに適用されている。このような「ママさん従業員」のポストは、就業時間が柔軟で、子どもの送り迎えの時間が確保でき、残業の必要もない。 例えば、1月に広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)が、このような柔軟な就業形態のポストを設置した雇用主58社のリストを発表している。6月には河北省(Hebei)邢台市(Xingtai)が「ママの業務ポスト」と称する新しい雇用モデルを導入し、これまでに2万5000人以上の女性がこのモデルを通して就職を果たしているという。 さらに12月初めには、山東省(Shandong)青島市(Qingdao)が、主に飲食業や家事代行サービス業分野の190の職務ポストを含む、同市初の「ママの就業ポスト情報リスト」を発表した。 「北京大学(Peking University)人口研究所の張蕾(Zhang Lei)副所長は「このような求人ポストは女性が家庭と仕事を両立するのに役立つが、そのポストの量と質の両面を改善する必要がある。現状の求人設定内容では、高学歴女性の人的資本の損失を加速させる可能性があるからだ」と指摘している。 上海市の取り組みについて「求人機会を女性応募者に限定していない点が際立っている」と指摘する声がある。「家族や育児の責任は女性だけのものではないことを認識し、全ての親を対象にワークライフバランス問題に取り組む」という姿勢が評価されている。 5歳児の母親である趙さんは「ですから、この求人リストにはもっと多くの男性労働者が従事する職種が加わることを期待しています。そうすれば、この取り組みが職場から女性を疎外するものにはならないでしょう」と話す。彼女は、子育てへの責任と与えられた子育て両立ポストの仕事内容に満足できなかったので、出産後に何度か仕事を辞めているという。 このような「子育てにやさしい就業ポストづくり」の動きは、一部の女性から評価されている。主に「母親が労働力として復帰する大きなチャンスを提供する」と考える女性たちだ。 中華全国婦女連合会に所属する北京と上海市、広東省の広州と深セン市(Shenzhen)の調査機関が昨年実施した調査では、回答者のうち40歳未満の専業主婦の82.7パーセントが仕事に復帰するつもりであることが明らかになった。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。