【毎日書評】社会人に役立つ「経済学」を短時間で学ぶコツは?
経済学はどうやって実験するのか
でも、経済の「しくみ」は目には見えませんよね。どうすればわかるのでしょうか。(18ページより) 経済学では「しくみ」を明らかにするために、さまざまな思考実験をしているのだそうです。とはいえ、てんびんやフラスコなどを使った実験を通して“さまざまな主張(=仮説)”を明らかにする科学であるならともかく、経済学の実験とはどのようなものなのでしょうか? 著者によれば経済学では、架空の世界を想定して経済社会のしくみを表すミニチュア(=モデル)を組み立て、それを利用して思考実験を行うのだとか。 たとえば、ホットドッグを買いたいと思ったとき、目の前にパン屋Aとパン屋Bがあるとしましょう。はたしてパン屋Aで買うべきなのか、それともパン屋Bで買ったほうがいいのか。基準は味かもしれませんし、値段かもしれません。いずれにしても、こうした架空の世界では、すべての人間が「合理的に動く」と考えるのだそうです。 合理的人間というのは、「(味や包装紙などの他の条件が同じなら)一番安い買い物をしたい」という経済的な動機で動く人たちのことをいいます。(19ページより) より正確に表現するなら、「限られた条件のなかで、ある目的を達成するために、もっとも望ましい行為を選択する行動」をする人たちのこと。上記の例でいえば、2つのパン屋という限られた条件で満足度の高い買い物をする人たちのことです。 では、合理的人間はどのように満足度の高い行動をとるのでしょうか? 例えば、消費者(=家計)が「駅近くのスーパーで半額セールをやっているから、買い物に行ってみよう!」という行動をするとき、行動を引き起こした原因は「半額セール」という「値段」といえます。 合理的人間の行動を促す原因のことを難しい言葉で「インセンティブ(誘因)」といいます。(20ページより) ここからもわかるように、経済学では「架空の世界に生きる合理的な人間がどのように行動するのか」をさまざまな想定したモデルを利用しながら思考実験しているわけです。(18ページより) 最初から読み進めれば、それぞれの経済知識がつながり、やがて大きな知識の「幹」となるように構成されているそう。 とはいえ各トピックは独立しているため、興味のある部分から読み始めてもOK。つまりは経済学を学びたい方にとって、非常に使い勝手のよい一冊だといえるでしょう。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: あさ出版
印南敦史