エンジンオイルは、減る? 減らない?
どんどんオイルを消費する、2ストロークエンジン
現在は一部の競技用車両のみですが、2000年代初頭頃まではたくさん走っていたかつての2ストロークエンジン車は、エンジンオイルをけっこう消費します。
2ストロークエンジンは、空気とガソリンを混ぜた混合ガスを、最初にクランクケースに吸い込んで圧縮し(一次圧縮)、それからシリンダー(燃焼室)に送ってさらに圧縮(二次圧縮)する構造です。 そのため4ストロークエンジンのように、クランクケースの中にエンジンオイルを溜めておくことができません(燃焼室にエンジンオイルを吸い上げてしまう)。 とはいえクランク軸やピストン、シリンダーなどは潤滑しないと焼き付いてしまいます。そのため、混合ガスにエンジンオイルを混ぜて供給し、クランク軸やピストン類を潤滑します。そして潤滑後のエンジンオイルは混合ガスと一緒に燃えて排出されます。 イメージ的には、4ストロークエンジンの「オイル上り」に近いものがありますが、もちろん意図的に行なっているのでトラブルではありません。とはいえその分エンジンオイルを消費するので、切らさないように補充する必要があります。 このため2ストロークエンジンは、トランスミッション(変速機)の部分は専用のオイルで潤滑し(規定量を入れて走行距離で管理)、エンジンには2ストロークオイルを使用します。
4ストと2ストでは、「オイル警告灯」の意味が異なる?
4ストロークと2ストローク、いずれの場合もエンジンオイルは重要なので、メーター内にオイル警告灯を設けていますが、それぞれのエンジンで少々意味合いが変わります。
4ストロークのオイル警告灯は、エンジンオイルの「油圧」が低下した時に点灯します。油圧が低下する主たる原因は、何らかの理由でエンジンオイルの量が減ってしまったために、オイルポンプで吸い上げられなくなった場合が多いです。そこまでエンジンオイルの量が減るのは前述したようなトラブルですし、またオイルの量が適正でもポンプの故障など潤滑系のトラブルも考えられるので、速やかに専門店で診てもらう必要があります。 ちなみに、近年の小~中排気量車だと、オイル警告灯を装備しない車両もあります。また1990年代後半から2000年代頃に流行したビッグスクター(排気量250~400ccの4ストロークエンジン)の中には、エンジンオイルの交換時期(走行距離)になったことを知らせるためのオイル警告灯を装備したモデルもありました。 対する2ストロークのオイル警告灯は、エンジンオイルのタンク内の残量が少なくなった時に点灯し、エンジンオイルの補充を促します。そのためスポーツモデルに限らず、原付スクーターなど装備が簡素なモデルでも、メーター内に必ずオイル警告灯を装備していました。 車種によってオイル警告灯が点灯してから完全にエンジンオイルが無くなるまでの走行距離は異なりますが、これは2ストロークエンジンオイルを補充すれば問題ありません。 というワケで、いまどきの4ストロークエンジンのエンジンオイルはほとんど減らないし、補充する必要もありません……が、油断は禁物。愛車を快調に維持するために、エンジンオイル量のチェックは忘れずに行ないましょう!
伊藤康司