『光る君へ』が斬新な大河になった理由 吉高由里子×柄本佑だから成立した“メロドラマ”
兼家(段田安則)の“呪い”を受け継いでいた道隆(井浦新)
兼家の死後、後継者に選ばれたのは、長男の藤原道隆(井浦新)であったが、娘の定子(高畑充希)に「皇子を産め、早く皇子を産め」「足りない、足りない、足りない、まだまだまだまだ足りない」と呪いのよう定子に繰り返し、その後、すぐにこの世を去るが、父の兼家と同じ「呪い」にかかっているのが見てとれた。定子がこの呪いをかけられても、表情ひとつ変えないところに、底知れない強さを感じた。 道隆がその後を託そうとした嫡男・伊周(三浦翔平)と対称的なのが道長である。道長は民のことを考える人である。彼はもともとはぼんやししている性質であったし、政に対しても確固たる考えを当初は持ってはいなかったように見えたが、まひろと共鳴しあって、このような境地に至ったのだと見ていてわかる。 まひろは、困っている人を放っておけない性質で、文字が読めない女性が、そのせいで子供を売られてしまっている姿を見て、ひとりでも多くの人に、文字が読めるように教えようとする。 まひろと道長は別れる形になるものの、まん延する疫病に苦しむ民を放っておけず、救いたいという思いが重なり偶然再開。疫病にかかってしまったまひろを道長は献身的に看病しつつも、彼女の手をにぎりそうでにぎらないという“メロドラマ”的な展開からも目が離せなかった。そんなふたりが、同じ“志”を持って、お互いに恥ずかしくない生き方をしようと思って高め合っていることが、個人的には、メロドラマ的な場面との相乗効果もあって、より心を動かされる。
西森路代