「トランプの負けは中国共産党が…」「9.11テロも『闇の政府』の…」トランプ信者(35)の驚きの主張とは〈アメリカ大統領選はどうなる?〉
浮動票を遠ざけるトランプ陣営の熱狂
では、冒頭の論点に戻ろう。 これだけ忠実な信者を抱えながら、なぜトランプは選挙に弱いのか。トランプを取り巻く熱狂は、強力な求心力となる反面、遠心力としても働き多くの有権者を遠ざけてしまうからだ。つまり、トランプの支持層は、広がりに欠けるのだ。 トランプを好きな人は好き、嫌いな人は嫌い。そこまではいい。どちらにしようか、と迷っている人までも、トランプの頑迷な姿勢が、支持から遠ざけてしまう。それがトランプの弱点だ。 先に挙げたように、トランプ信者は、投票者の3割前後を占める。もちろん、3割では選挙には勝てない。残りの2割はどこから来るかというと、浮動票である。極端に右側でもなく、極端に左側でもない、穏健派と呼ばれる人たちの投票が、勝負の行方を握る。人種と性別でいうと、郊外に住む裕福な白人女性が狙うべき浮動票となる。 ボランティア活動で聞いた郊外に住む、2人の白人女性の声を記しておこう。2人とも共和党員で、16年の選挙ではトランプに投票したが、20年はトランプには投票しないという。 キンバリー(48)は、以前の結婚で夫から家庭内暴力(DV)の被害を受けたことがある、と言う。 「トランプの言動を見ていると、どうしても自分のDVの体験を思い出してしまうので、拒否反応が出てしまうわね。ジョージ・フロイドの事件の直後も、ワシントンDCで催涙ガスを使ってデモ隊を追い散らすのを見ると、トランプに投票するのは二の足を踏むわ。我が家には5人の娘もいるので、なおさらね」 夫を亡くし今は一人暮らしだという70代のリンダは、こう話す。 「わが家は祖父母の代からみんな共和党支持者なのよ。親戚も全員ね。トランプの経済政策には大賛成よ。けれど、何でも力ずくで解決したがる姿勢には問題があると思うわ。ブラックライブズマターの運動で、デモをする人たちにも、武器を使ってでも抑え込もうとしているじゃない。それ以前に、もっと対話が必要よね。このままだと、トランプに投票する気にはなれないわね」 こうして20年の選挙でトランプは敗北を喫した。