炎上どころか大絶賛…最も成功した少女漫画の実写化は?(4)絶対に失敗する…不安を吹き飛ばした力技とは?
「こんな恋がしてみたい」と、世の女性たちの心をときめかせてきた“少女漫画”。実際にはありえないような夢物語も特徴の1つであり、実写化作品の失敗例は多く、まさに死屍累々である。しかし、中には原作ファンの心を掴むことに成功した作品も。今回は少女漫画の実写化を見事に成功させた映画を紹介する。第4回。(文・かんそう)
『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016)
監督:月川翔 原作:マキノ 脚本:松田裕子 キャスト:中島健人、小松菜奈、千葉雄大、高月彩良 【作品内容】 親の転勤によって学園寮に入ることになった赤羽由宇(小松菜奈)は高校デビューを目指すさえない女子高生。女子たち憧れの「白王子」こと白河タクミ(千葉雄大)くんと、「黒王子」と恐れられる黒崎晴人(中島健人)君と同室になってしまう。由宇は、副寮長である黒崎君に逆らった罰として、「絶対服従」を言い渡されてしまう。 【注目ポイント】 主演は小松菜奈、中島健人、千葉雄大、高月彩良など。小松菜奈演じる女子高生の由宇は、親の転勤によって謎の学園寮に入ることに。そこでは誰にでも優しい学園イチ人気者の白王子こと白河タクミ、そしてドSな性格で他の生徒から恐れられている黒王子こと黒崎晴人の2人がいた。全く違うタイプの2人のイケメン男子との突然の同居、いったいどうなっちゃうの~!? …という、これぞ王道の少女漫画というべき現実では絶対に起こり得ないトンデモ設定の数々。こんな作品を実写化したところで、中途半端なキャストでは設定の強さに耐えられず破綻してしまう。 そんな無理難題を解決してしまったのが、白王子と黒王子のキャストだ。白王子・白河を演じたのは、この世に生まれしナチュラルボーン・プリンス千葉雄大。当時27歳の千葉雄大が高校生役を演じられるという時点でもはやそれがなによりもフィクションなのだが、見つめられたら溶けて無くなってしまうほど甘い視線と真夏のひまわりよりも明るいその笑顔は画面から飛び出してくるんじゃねぇのかと思わせるほど。 圧倒的な「陽」のパワーは年齢という概念を完全に忘れさせていた。そんな男がバファリンよりも優しい白河を体現した結果、もはや千葉雄大セラピーとしか言いようがない空間が誕生していた。 そして、黒王子・黒崎を演じたのは中島健人。当時、アイドルグループSexy Zoneとしてスターダムを駆け上がっていたセクシーサンキュー中島は「やりすぎ」なほどにこのドS王子を完璧に演じていた。少しでも本人に恥ずかしさや照れがあればこの映画は崩壊し中途半端な作品になっていただろう。しかし、中島健人は違う。ファンが、観客が思う、理想の黒崎をその理想を遥かに超えるほど全力でやりきってしまったのだ。ある意味「恐怖」すら覚えてしまうほどに。 「こんなヤツいないだろ」「カッコつけすぎ」そんな声を吹き飛ばすほど「少女漫画のキャラクター」になりきった2人によって、この映画は成立している。心からの拍手を送りたい。 (文・かんそう)
かんそう