ヒヨコから育てたニワトリを食べる…家族でヒヨコを育て、時には「丸焼き」にする生活
卵からニワトリを育て、その卵、肉をいただく暮らしは、そうやすやすと誰でもできることではありません。イラストレーターの服部小雪さん一家は、12年前、サバイバル登山家として知られる夫・服部文祥さんのアイデアで、自宅でまずはヒヨコを育て始めました。自らいきものを育て、そして自らその命をいただくまでの日々を、服部小雪著『はっとりさんちの野性な毎日』から抜粋して、紹介します。 【イラスト】ヒヨコのいがぐり頭から真新しい命の匂い ■我が家にヒヨコがやってきた 2012年、文祥はいつもの野性的カンで、自宅の庭の斜面をニワトリ飼育に利用しようと考えた。鹿の雑肉もニワトリの良いタンパク源になるはずだと言う。まずは子供たちの教育だと思ったのか、父から子へ『ニワトリの絵本』(農文協) など、数冊の本が手渡された。
「オレ、ニワトリ係になる!」。シナリオ通りに玄次郎が言うと「シュウも~」と末の娘が言いだした。祥太郎は生き物が嫌いというわけではないが、自分からは煩わしいことに関わろうとせず、ゴタゴタを遠くから見ている。 まもなくヒヨコを仕入れる、という早い展開に、ついニワトリの本を夢中で読んでいた私は我に返った。近所迷惑では、とか鳥インフルの問題は、など思いつくかぎりの心配事を挙げてみたが、文祥は、飼えなかったら、俺が責任を取る、と言う。鶏の丸焼きを思い浮かべて、フクザツな気持ちになった。
今やヒヨコもネットで注文する時代である。売れ残っていたロードアイランドレッドという赤褐色のニワトリを選んだ。ロードアイランドは、アメリカで採卵用に品種改良されたニワトリだという。メスのヒナが5羽セットで3千円。希望すれば、オスがサービスで1羽ついてくる(もちろん文祥はオス付きで注文した)。 生き物は宅配では届けてもらえず、自分で運送会社に受け取りに行くシステムになっている。買ったものは自力で運ぶ。運べないものはなるべく買わない、というのが服部家のモットーだ。いつものように、父と子が自転車で出発した。