展望・自民総裁選(3) 乱戦の「宴の後」はどうなる
異例の森・森山会談
このため乱戦、混戦の総裁選のあとの「戦後処理」をどうするかの問題が残る。小泉発言によって総裁選直後の解散総選挙が既定路線になりつつあるが、自民党政権の継続が保証されているわけではない。 自民党のベテラン職員は1955年の自民党結党直後の「8個師団」と呼ばれた時代に戻る可能性を指摘する。総裁選の各候補に集まった推薦人を加えた20人規模の議員グループが次の自民党の基礎を築くという訳だ。ただし8個師団の軸となった8氏を並べると、目がくらみそうになる。岸信介、石橋湛山、池田勇人、佐藤栄作、河野一郎、三木武夫ら、今も顔と名前が一致する実力者ばかり。 8月21日夜、都内のホテルで森元首相と森山裕総務会長による異色の会談が行われた。この会談のテーマこそが総裁選後の混乱収拾にあった。ここで森氏は小泉政権を念頭にこんな要請をしている。「党運営で中心になる人間がいない。そこをしっかりやってもらいたい」 今の自民党で非主流派とされながら、岸田首相が最も頼りにした幹部は森山氏を置いて他に見当たらない。自民党総裁は即日本の首相だ。政治には、1日の停滞も許されない。ましてやこれだけの候補者がひしめいた総裁選後の党内平定は生易しいことではない。「宴の後」に食べ残しや食器が散乱している状況だけは避けなければならない。
【Profile】
後藤 謙次 政治コラムニスト、白鴎大学名誉教授。1949年生まれ。73年早稲田大学法学部卒業、共同通信で政治部長、編集局長などを歴任。その後TBS系『NEWS23』キャスター、テレビ朝日系『報道ステーション』コメンテーターを務めた。2024年度日本記者クラブ賞受賞。著書に『ドキュメント平成政治史』(全5巻、岩波書店)など。