『嘘解きレトリック』松本穂香の新たな魅力に目を奪われる 物語を彩る野村康太の演技も
これまでも魅力的な衣装や小物が作品を彩ってきた『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)。しかし、数あるエピソードの中でも第9話で見られた鹿乃子(松本穂香)の装いは、まさに“眼福”という言葉がぴったりな特別な1話になったのではないか。 【写真】笑みを浮かべる皐月(野村康太) 左右馬(鈴鹿央士)の探偵事務所に、千代(片山友希)が依頼を持って現れる。普段から千代を苦手としている左右馬は気が進まないものの、鹿乃子の言葉もあり、藤島家の知人という実原久(余貴美子)との面会にこぎつける。 千代の紹介というだけあり、久は裕福な依頼人だった。乗り気でなかった左右馬も、目の前に置かれた大金を見た途端、態度が一変する。久は娘の依里(吉田美佳子)の写真を左右馬と鹿乃子に見せた。それとなく久に席を外すよう言われた千代が、その状況すら「探偵小説の登場人物のよう」と前向きに受け止めるポジティブさを見せるところも愛らしい。 25年前、依里は久の夫の書生である乙吉(濱田和馬)と恋に落ちた。激怒した久の夫は乙吉を追い出し、すぐさま依里の縁談を進めた。しかし結婚式の当日、依里は乙吉と駆け落ちしてしまう。久は娘の行方が気になったものの、夫は一切の捜索を許さなかった。 そんな折、久の夫が突然の病で他界する。書斎の整理をしていた久は、依里の駆け落ち後を追跡した調査書類を発見。実原家の顧問弁護士・神代(おかやまはじめ)が調査に乗り出すと、乙吉はすでに流行病で亡くなっており、依里も一子をもうけた後に命を落としていたことが判明する。 神代は依里の遺した子どもを探すため新聞広告を出す。すると、依里の息子を名乗る徳田史郎(濱尾ノリタカ)と本条皐月(野村康太)が現れた。今回の依頼は、この2人のうち“本物の孫”を見極めることだったのだ。 千代が用意した優美な洋装に身を包んだ鹿乃子の姿は、このエピソードの見どころのひとつと言える。普段和装から一転、メガネと調和した大正モダンの雰囲気を纏った彼女の新たな魅力に、思わず目を奪われる。孫を名乗る史郎と皐月を交えた食事の席では、真実と虚偽が絡み合う会話が展開される。鹿乃子は史郎の言葉に偽りを感じ取るものの、それを証明する方法に思い悩むことに。 しかし、決定的な手がかりは亡き依里が子どもの着物に縫い付けた背守りの模様にあった。皐月の主張する「サツキの花」、実原夫人の描いた図……すべての点が次第に繋がっていく。 特に印象的なのは、皐月の自然体で謙虚な振る舞いだ。弁当を3つも平らげる健啖ぶりや、素直で温かみのある表情、飾らない物腰の数々。デビューから2年で地上波ドラマ初主演を果たした野村康太の丁寧な演技が、この好青年の魅力を存分に引き出している。はにかむような笑顔や、ラストの久に対する誠実な態度には説得力があり、見る者の心を捉えて離さない。 2022年のデビュー以来、『silent』(フジテレビ系)『差出人は、誰ですか?』(TBS系)と立て続けに話題作への出演を重ねてきた野村。『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京系)での好演を経て、『その着せ替え人形は恋をする』(MBS・TBS)では早くもダブル主演に抜擢されるなど、着実にキャリアを重ねてきた実力派だ。羽島手の月9ドラマ出演となった今回の皐月役でも、その期待に違わぬ演技で物語を彩った。 そして次回予告には、鹿乃子の知らないところで九十九夜町を訪れる母・フミの姿が。特別な力を持つがゆえに周囲から疎まれ、苦悩の日々を送ってきた鹿乃子。すれ違い続けてきた母娘の心の行方に、新たな展開が待ち受けているようだ。
すなくじら