リーゼント和気は“顔面崩壊”で11回TKO負け!
「堅くなって序盤にいけなかったことがすべて。和気は、どうしてもゆっくりと合わせないと打てない癖がある。そこで相手をリズムにのせてしまった。バッティングとパンチで右目も見えていなかった」と、古口会長の回顧。6回が、始まる前のインターバルで、右目がもう塞がるほど腫れ、度重なるダウンをみかねたレフェリーは、試合放棄をセコンドに求めたという。だが古口会長は、和気の意思を何度も確認した上「ノー」と答えた。和気のどこに、そんな力が残っていたのだろうか。 遅まきながらの反撃が始まった。狙い済ました左のカウンターで、グスマンの顎を貫くと、KOマシンが明らかに下がった。7回も、和気が前へ出る。見る見る、今度はグスマンの左目が腫れ始めた。和気がステップを刻み、細かいショートパンチの連打を出し始めると、場内には「慎吾コール」。 「まだチャンスはあるぞ!自分を信じろ、ここから!ここから!」 インターバルの度に特別セコンドに入っていた俳優で画家でもある片岡鶴太郎氏が檄を飛ばした。 何かが起きそうな予感はあった。 それでもグスマンは「和気は過信した。そのうちミスを犯すことはわかっていた。おれはそこを狙っていたのだ」と言う。彼は「9回に勝利を確信した」というのだが、後半は、前半のダウンで奪った大量ポイントを守り、和気の一発を受けないような慎重な戦いに終始していた。 11回に和気が、また右のパンチをもらって動きが止まると、無残に変形、変色してしまった右目の回りを確認したレフェリーは、迷わず試合を止めた。その判断は間違っていなかった。 キャリア不足の拙さや荒さが随所に見え、決して一流の域にあるボクサーには見えなかったグスマンは、リングに大の字になって喜びを表現していた。 抱えられるようにして控え室へ戻った和気にタクシーが手配され病院へ直行することになった。当初、記者への対応はなしとされていたが、和気自身がスタッフを押しとどめて控え室のドアが解放された。パイプ椅子に座った和気は「すべてです。結果がすべてです。見てください、このぶさまな顔を。これが結果です。おれより相手がすべてを上回っていた。それだけです」と、言葉を搾り出した。 古口会長が、「あの展開から、よく盛り返して、左ストレートを効かせた。気持ちが強くなったじゃないか」と声をかけられると、会長の両手を握り「会長、すいませんでした」と言って号泣した。 “顔面崩壊”した右の頬骨は亀裂骨折の疑いがあるという。