真のエースへと成長したウインターカップ…八村塁が「バスケはすっごい、すっごい楽しいです」と言える理由
■八村劇場だった残り1分間の攻防
奇跡はここで終わらない。残り1分を切って69-69の同点。ここで福大大濠の牧隼利がドライブをしてダンクに踏み切ろうとすると、八村が豪快なブロックで阻止。さらにブロックしたあとのこぼれ球を自らで奪うと、ノーマークで構えていたシューターの富樫洋介にパスを送る。そのシュートが外れるやいなや、今度はゴール下に跳び込んでタップシュートを決めて71-69で再逆転。これが決勝点となって2連覇を達成した。 苦しい時にチームメートを励まし、誰よりも高く跳んで空中戦を制し、みずから決勝点を決めてみせる。まるで八村劇場のような1分間の攻防は、高校バスケ史に語り継がれる名シーンだといえよう。佐藤コーチが求めていた『エースの風格』をまとった姿がそこにはあった。 1年後の2015年12月29日。土浦日大との決勝で八村塁は34得点、19リバウンドを記録し、3年連続ベスト5を受賞。明成は能代工業、洛南に続き史上3校目となる3連覇を達成。明成の大黒柱である八村塁は、お決まりのフレーズを晴れやかに言うのだった。 「皆さん、バスケはすっごい、すっごい楽しいです!」 文=小永吉陽子
BASKETBALL KING