「強運の前大統領は突然の惨劇を"トランプ劇場"に変えた!」 暗殺未遂事件と大統領選の行方を徹底分析
布施氏はトランプ政権時代にテレビ朝日のワシントン支局長を務めていた経歴があり、2020年の米大統領選で実際にトランプ候補の選挙戦を取材し、全ての演説をライブ、または録画で見ている。 「最初の3発の銃声の直後にシークレットサービスのひとりがステージに駆け上がり、トランプ氏に覆い被さりました。続けて複数の警護官たちもトランプ氏を囲みますが、日本のSPが採用しているブリーフケース型の防弾板はなく、警護官の生身の身体で弾除けをする警護方法です。 ただ、明らかにところどころで隙間ができてしまっていて、完全にトランプ氏を覆うことはできず、まだその時点で排除されていない第2撃や第3撃のリスクから、完全に防護する態勢にはなっていません」(布施氏) トランプ前大統領を防弾SUV車に移動させる際、シークレットサービスは周りを囲うが、トランプの頭部と顔面の前は、背の低い女性のシークレットサービスがふたりで警護。トランプ氏の顔面は丸出しだ。狙撃犯が複数いた場合、トランプ氏は完璧にヘッドショットを食らってしまう。 布施氏もシークレットサービスへ厳しい意見をぶつける。 「さすがのシークレットサービスもトランプ氏だけに神経が集中してしまっている『小学生のサッカー状態』です。ふたり目の銃撃犯がもしかしたらいるかもしれない、というリスク対応にまで神経がまわっていないように見えます。 特殊部隊・SWATとおぼしき迷彩服の捜査官がひとりだけステージに上がってきて、銃声が聞こえてきた方向(ステージ向かって左側)に銃を向けながら次なる犯人の襲撃に備えています。 シークレットサービスがトランプ氏に気を取られる中、冷静に外周を固めて第2撃という潜在リスクに備える冷静な対応はプロとしか言えません。ただ、それをやっていたのがこの捜査官ひとりだけなのが残念です」(布施氏) では、肝心のトランプ氏の動きはどうだったのか。 「銃撃の瞬間、トランプ氏は手で顔を押さえ、崩れ落ちるようにかがみ込みながら演台の裏に入ります。演台には防弾プレートがはめこまれているので、第2撃を避ける観点からも、トランプ氏の動きは正解かつ機敏で100点満点の対応です。ショック状態で崩れ落ちた要素も強いものの、79歳の咄嗟(とっさ)の反応としては見事と言っていいでしょう。 おそらく、大統領の現職だった時代にシークレットサービスから受けた狙撃を受けた際の対応訓練が生きていたのでしょう」(布施氏) 一瞬の間をおいてからの5発の銃撃から身を守ったのは、演壇の裏に伏せたトランプ氏の行動だ。しかし、トランプ氏の本領はこの次の瞬間から始まる。