TKOで再起した八重樫に井岡戦が浮上!
前WBC世界フライ級王者の八重樫東(32歳、大橋)が1日、大田区総合体育館で行われたノンタイトル8回戦でソンセーンレック・ポスワンジム(30歳、タイ)と対戦、2度のダウンを奪う圧倒的な展開で、2回2分5秒にTKO勝利を果たした。 陣営では、3階級制覇を果たしたばかりの井岡弘樹(22歳、井岡)への挑戦プランを暖めていて、ミニマムの世界統一戦で名勝負を演じた両者が違った階級で、再び拳をまみえることになれば最強の日本人対決カードになることは間違いない。
右のカウンター。1ラウンド終了間際、出合いがしらに右をぶちこむと、世界戦経験もあるタイ人は、思わずダウン。ゴングに救われたが、2ラウンドに入っても八重樫の勢いは止まらない。右からの回転力を活かしたコンビネーションで揺さぶって左のガードを下げさせて所へ、角度のある右を叩き込んだ。ソンセーンレック・ポスワンジムはリング上で大の字になってしばらく動けないほどの威力だった。 昨年9月に軽量級最強と言われるローマン・ゴンザレス(ニカラグア)の挑戦を受けて見事に散った。WBC世界フライ級タイトルを失ったが、激闘王としての人気は、敗れて逆に急騰。年末には階級をひとつ下げてWBC世界ライトフライ級王座決定戦に出るチャンスをもらったが、ペドロ・ゲバラ(メキシコ)に、まさかのKO負け。ロマゴン戦から残っていたダメージと、ライトフライ級への過酷な減量の二重苦を背負い本来の力を発揮することができずに引退説が囁かれていた。 この日の試合後に、八重樫は、「一度は引退も考えましたが、みなさんに勇気をもらい、家族の賛成もあって、このリングに帰ってきました!」とリング上で高らかに語った。 階級をライトフライから今度は二階級上げての再起戦。 「動きはまだまだ。もっと足を使いたかったが使えなかったのがマイナス25点。左のガードが甘かったのがさらに10点減点。自己採点は65点ですかね」 不用意な左フックをもらった右目が少し腫れていた。 スーパーフライのリミット52.1キロでの試合だったが、計量後、大きなリバウンドをすることを避けて、56キロ前後でリングに上がった。タイ人のパンチを警戒したせいもあったが、思った以上に手数は少なく動き自体は重く見えた。パンチ力は、階級をスーパーフライに上げても通用する破壊力を十分に維持しているように見えたが、本人は「まだまだスーパーフライで通用するパンチにはなっていない」と納得がいっていない。おそらく本来の適性階級はフライ級なのだろう。フィジカルを担当している土居進トレーナーは、「だいたいのフレームはできてきたので、今回は、体重をしっかりと乗せてパンチを打つための肉体調整を進めた。最後の右も、これまでは打たれる危険な位置に顔があったが、体の使い方がうまくなってきたのでずらすことができていた。進歩は見えています」と評価した。