釜山に入港した米空母をドローンで撮影した中国人留学生ら、携帯電話に軍事施設の写真500枚
釜山警察庁は13日、中国人留学生3人が少なくとも2年間にわたり、韓国の軍事施設を数百回も撮影していた事実を確認した、と発表した。今月9日には国家情報院(韓国の情報機関。国情院)の建物をドローンで撮影した中国人が現行犯逮捕された。韓国警察は、こうした犯行が中国当局などによって事前に企画された可能性を念頭に置いて捜査を拡大している。 【Photo】中国「中利科技公司」のドローンが台湾・金門島上空から撮影した映像
釜山警察庁は今年6月25日、釜山市南区竜湖洞の韓国海軍作戦司令部釜山作戦基地近くの山からドローンを飛ばして同基地に停泊中の米空母「セオドア・ルーズベルト」をおよそ5分間撮影した中国人留学生3人を、軍事基地および軍事施設保護法違反の容疑で逮捕した。空母セオドア・ルーズベルトは当時、韓米日3カ国の初のマルチドメイン(多分野)軍事演習「フリーダム・エッジ」に参加するため、釜山に入港していた。これらの留学生は、韓国警察の取り調べで「ただの好奇心だった」と供述していたが、警察が携帯電話などを調べた結果、少なくとも2年前から釜山の軍事施設を撮影していた写真が見つかった。当時飛ばしたドローンには、およそ5分間の動画があったが、空母と海軍作戦司令部基地の全景が捉えられていたという。 留学生らが2022年9月から釜山海軍基地近くの野山を踏査し、ドローンを飛ばす場所を物色していたことも明らかになった。ノートパソコン・携帯電話から見つかった軍事施設関連の写真だけでも500枚を超えるという。留学生らの携帯電話には中国公安と推定される電話番号も保存されていた、と警察は明かした。警察は、留学生らが中国公安と関連を有している可能性も排除していない。 警察は、留学生らを出国停止にして対共容疑などを引き続き調べる方針だ。中国人留学生らは30-40代で、現在は釜山のある国立大学の修士課程・博士課程に留学生の身分で在籍していることが分かった。一部の留学生は、韓国で学んで中国に戻り、社会人生活を送った後、再び韓国にやって来たという。 情報当局は、このところ相次いでいる中国人による国家保安施設の違法撮影が、事前に企画されたものである可能性に注目している。今月9日には、ソウル市瑞草区内谷洞の献陵・仁陵(献仁陵)前にある国情院管理の駐車区域から許可なくドローンを飛ばして撮影していた中国人を摘発した。警察が調べた結果、ドローンのカメラは献仁陵だけでなく国情院の建物の一部も撮影していた。この中国人は「ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界文化遺産の献仁陵に非常に関心があってドローンを飛ばしただけ」と主張したが、仁川国際空港から入国するなり献仁陵に直行した事実も判明した。警察は、翌日にこの中国人をひとまず釈放したものの、出国停止措置を取った。警察関係者は「今後、出頭させるなどの追加の取り調べを行い、対共容疑について探っていく」と語った。 問題は、今後の取り調べで対共容疑点が立証されても「スパイ罪(間諜〈かんちょう〉罪)」で処罰するのは事実上困難だということだ。処罰する条文が十分に整っていないからだ。現行の間諜罪(韓国刑法98条)は「敵国」のためのスパイ行為だけを処罰対象にしているが、大法院(最高裁に相当)の判例上、敵国は「北朝鮮」だけ。すなわち、現行法の通りであれば、北朝鮮を除くいかなる国に国家機密を渡しても間諜罪では処罰できない。間諜罪の刑罰は7年以上の懲役で、最高で死刑まで科することもできる。 チュ・ヒョンシク記者、ク・アモ記者