事故増加や旅行にも影響! 大都市でも路線バスの減便や廃止が続出!!
「実は1985年頃から路線バス業界の規模は縮小傾向にあります。しかし、運賃の値上げを行なえば自家用車で移動しバスの利用者が減ってしまいます。そこで昭和末期以降、各社では路線バスの運賃の値上げを消費税分のものにするなど最小限に抑える一方、高速バスに参入して増収を図ったり、運転士をはじめとする社員の数の削減も断行。さらに給与水準も下げました。 この40年かけてやれることを全部やった結果、子育て世代の若い運転士は子供の学費が稼げないと退職し、運転士の高齢化も進みました。バス会社の営業所によっては運転士の平均年齢が50代半ばというところもあります。運転士不足を解決するためには抜本的な対策が必要となります」 運転士不足に対して、バス会社、そして地域ではどのような対策を取っているのか。 「例えば、バスを2両連結した連節バスを運行することで、ひとりの運転士が一度にたくさんの人を運ぶことを可能にする。また、運転士のいらない自動運転バスを導入するといった取り組みが始まっています。 ですが、連節バスを運転するためには一般のバスを運転する以上の技術が必要なので、運転士の中でも操作できる人が一部に限られるという問題があります。自動運転バスもまだ開発段階で実用化はまだまだ先になるでしょう。自動運転の技術が確立しても事故が起きたときに誰が責任を取るのか、といった法整備の問題も出てきます」 こんな構想もあるという。 「外国人労働者に運転士になってもらおうというプランも出ています。ですが、先ほどお話ししたとおり、日本の路線バスは運転業務以外の作業が多く、日本のバスの運転に適応できるのかという問題があります。 また、主婦などにパートで運転士をやってもらおうというアイデアもありましたが、運転士が一番必要な朝の通勤時間や夕方以降の帰宅時間に対応できるパートが皆無であったことから、実現に至りにくい状況です」 ■運転士不足で教育にも支障が 運転士不足の問題、このまま放置するとどのようなことが起こるのか。 「直近で予想されるのが、紅葉の季節の貸し切りバス不足です。ゴールデンウイークから夏までの間は、旅行業界で閑散期と呼ばれる時期。そんなタイミングですら観光バス不足が起こっていますから、観光客がグッと増えて修学旅行を行なう学校もある10月前後は、大手旅行会社主催のパッケージツアーで開催直前に中止となるケースも再び出てくる可能性があります」 長期的に考えると、このようなことも。 「路線バスが廃止され、自家用車で移動せざるをえなくなるので、高齢者の免許返納が進まず、結果、交通事故が増えていくことも考えられます。 また、私立の学校や過疎化の進む地域では生徒の送迎にスクールバスを活用しているところがありますが、多くはバス会社に運行を委託しているため、スクールバスが運行できなくなります。駅から工場まで社員をピストン輸送する送迎バスもバス会社の委託運行なので、工場の稼働にも支障が出ます」 台湾の大手半導体メーカーの工場が熊本県にできて、地域が活性化されている。そんな成功例を受けて、世界的なメーカーの工場を誘致しようとしても、バスの運転士不足が深刻化すると、働き手が工場へ行く手段がないという理由が決定打となり、ご破算となる可能性もあるのだ。 ■住民の意識次第で状況は大きく変わる