背景に「上野」舞台の複雑な人間関係か 那須2遺体、殺人容疑逮捕で新局面
栃木県那須町で遺体で見つかった宝島龍太郎さんと妻の幸子さんは、平山綾拳容疑者らに殺害された疑いが強まった。捜査本部は平山容疑者以外の5人についても殺人容疑で再逮捕する方針だが、一連の事件の背景には東京・上野を舞台にした、首謀者、中間指示役、仲介役、実行役が交錯する複雑な構図も浮かび上がる。 【写真】移送される若山耀人(きらと)容疑者と子役時代のプロフィル写真 「宝島さんという名前さえも知らなかった」 11日に殺人容疑で再逮捕された平山容疑者は、夫妻の遺体が発見された翌日の17日に出頭して21日に死体損壊容疑で逮捕された際、取り調べにそう供述したという。 これまでの捜査で、事件の首謀者として、夫妻の長女と内縁関係にある関根誠端容疑者が浮上。関根容疑者の知人、前田亮容疑者(36)も死体損壊容疑で逮捕されている。 被害者の名前さえも知らない容疑者がいた一方、事件の底流には東京・上野を舞台にした複雑な人間関係も垣間見える。 関根容疑者は、夫妻の長女と学生時代に交際。一度は別れたが、数年前に再び交際を始めると、夫妻が営む上野の飲食店で「マネジャー」として働くようになった。近隣の飲食店からは「半グレのようだった」と敬遠されることもあったが、仕事ぶりを好意的にみる関係者も少なくはなかった。 一方、前田容疑者とは十数年来の友人だった。関係者によれば、関根容疑者が以前働いていた上野の飲食店に、前田容疑者が客として通っていたのが交友関係の始まりだったという。 前田容疑者自身も宝島さん夫妻とは面識があった。約10年前から上野で飲食店を営んでいた夫妻は、上野駅から歩いて10分ほどの場所で不動産会社を営む前田容疑者を店舗拡大の頼りにした。物件探しの世話をするうちに、夫妻と関係を深めたとみられ、関根容疑者が夫妻の間に入ったわけではなかったという。 関根、前田両容疑者は遺体発見前日の4月15日、「物件探し」の名目で夫妻と品川区内で会った。前田容疑者が最後に送り届けて紹介した物件は、夫妻が殺害された現場とされる同区の空き家。前田容疑者の会社が管理していた物件だった。 関根容疑者の下で中間指示役として関与した佐々木光容疑者や、実行役とみられる姜光紀容疑者、若山耀人容疑者らに夫妻との面識はなかったとみられる。平山容疑者を含む全員が「飲み屋で知り合った」程度の付き合いだったとみられ、苗字も知らない希薄な関係だった。
いずれも高額な報酬が犯行の動機だったとみられ、関根容疑者が事件の中心にいた可能性が高い。捜査関係者は、夫妻が営む飲食店の経営権を巡る不満が動機になったとみている。(内田優作、前島沙紀)