不正持ち込み最多に 海外旅行客の肉・加工品
家畜伝染病拡大恐れ
2023年に海外からの旅行客が不正に持ち込んだ肉や肉製品の発覚した件数が、過去最多を更新した。農水省のまとめによると、10月時点で12万2534件となり、最多だった19年の1年分を1割上回った。インバウンド(訪日外国人)数の回復が要因で、韓国や中国、ベトナムの旅行客の持ち込みが多い。肉を通じてアフリカ豚熱や牛などが感染する口蹄疫(こうていえき)を広げる恐れがあり、農水省は警戒を強める。 口蹄疫や豚熱、アフリカ豚熱などは、ウイルスに感染した肉や肉製品からも感染する。このため家畜伝染病予防法では、一部の国からの肉や肉製品などの輸入を禁止。アジアからは原則として持ち込めず、罰則もあるが、知らずに持ち込む事例が後を絶たない。 不正な持ち込みのうち、最も多い韓国の旅行客が16%、中国も16%、ベトナムが8%を占める。同省動物衛生課によると、3カ国ではいずれもアフリカ豚熱が発生。特に韓国では22日、日本との行き来が多い釜山広域市でも野生イノシシの感染が確認された。 同省が水際対策を強化し、不正な持ち込みが発見しやすくなったことも、過去最多更新の背景にある。空港や港に配置する探知犬は19年度の53頭から140頭に増頭。同法の改正で家畜防疫官の権限を強化し、取り締まりもしやすくした。 年末年始や旧正月のある2月は、アジアを中心に海外との行き来が活発になる。同省は畜産関係者に対し、①家畜伝染病の発生地域への不要不急の渡航自粛②外国人従業員が畜産物を携帯品や国際郵便物で持ち込まないよう周知する──ことなどを呼びかけている。
日本農業新聞