元中日、阪神のパウエルが語るイチローの技。「イチローはクレージー」
メジャー通算3000安打を目指すマーリンズのイチロー外野手(41)を、敵軍から特別な思いで見守っているのが、アストロズのアロンゾ・パウエル打撃コーチ補佐(51)だ。 「イチローはスーパースター。最高峰を極めた打者の1人だ。日本で同時期にプレーできたことは誇りだし、彼のメジャーでの成功を心から嬉しく思う」と語った。 最初の出会いは、イチローがオリックスで大ブレークした94年春のオープン戦。当時オリックスの臨時打撃コーチとしてキャンプに帯同していたブーマー氏が、パウエルに「この選手をみとけよ」とイチローを指差したという。その年イチローは当時のシーズン最多となる210安打を放って日本プロ野球記録を樹立するが、ブーマーはイチローの非凡さを見抜いていたのだろう。 当時は、“振り子打法”と呼ばれた独特のフォームが話題に上り、重心が前後に移動する打ち方に批判的な意見もあったが、パウエルはイチローのスイングに目を奪われた。 「フォームはタイミングを取るためのものだから、どこでタイミングをとるかは人それぞれ違って構わない。僕が注目したのは、彼のスイング。ボールの芯を捉える能力の高さだった。イチローは信じられないほど、目と体の連動能力が高かった」 引退後、打撃コーチとしてマイナーからメジャーまで広く指導に当たってきたパウエルは言う。 「彼は空振りすることが極めて少ない。85%のボールを捉えることができる。これは極めて高い数字だ。メジャーの3割打者でも、ボールを捉えてスイングできる確率は約7割から7割5分じゃないかと思う」 イチローを見た時の衝撃は、03年マーリンズ傘下の2Aチームの打撃コーチに就任し、若き日のミゲル・カブレラ(タイガース)を見た時に蘇った。 「最初の打撃練習をみて凄いと分かったし、3試合観た後には将来のスーパースターになると確信できた。イチローもそう。非凡な才能というものは、とても顕著なものなんだ」 イチローのボールを捉える非凡さを裏付ける事象として、パウエルの印象に残るのは、97年6月に樹立した216打席連続無三振(97年6月)という日本プロ野球記録だ。パウエル自身も選球眼の良い打者だったが、「私は日本で7年間プレーしたからよく解る。日本の投手はフォークやスライダー、シュートなど多彩な球種を投げる。そんな中216打席も三振しないなんて信じられないし、その間空振りがほとんどなかった(実際には8度)のは驚き以外何ものでもない」という。