「絶対的な悪の勝ち誇る国」と化したロシアで、正義を掲げて行動したジャーナリストが迎えた「皮肉すぎる末路」
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第37回 『「あなたには子どもがいますか?」「もし自分だったらと想像できますか?」...ロシア当局に身体拘束されたジャーナリストが捜査員に語った戦争の悲惨さ』より続く
屈辱的な検査
囚人護送車のドアがわたしの後ろで大きな音を立てて閉まった。狭苦しい檻の中で、わたしは一人だった。腰掛に座り、小さな格子窓から差してくる昼の光の帯を見つめた。30分後に囚人護送車は留置所の前で停まった。 夜勤の若い女性看守がクルマのほうに来た。驚いたように新入りの囚人であるわたしを見た。わたしの白いパンツスーツはどう見ても獄舎の寝台には不釣り合いだった。 「規則からの逸脱は認められません。ここには決められた手順があるんです」 弁解するように早口で女性看守は説明した。それからわたしを鉄格子の中へ入れ、カギをかけた。 わたしの手錠を外すと、彼女は大きな声で言った。「装飾品はイヤリングも指輪も全部外す。服を脱ぐ。身体検査をする」 わたしを屈辱的な手順に従わせた後で、女性看守はバッグの中の持ち物検査を始めた。 「これはダメ。これもダメ」バッグの中にあった化粧品を横に置いた。
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