「駅そば」の今とこれからを考える
何気なくインターネットを見ていたら、駅そばを「絶滅危惧種」と評するサイトに行き当たった。世間は駅そばをそのように見ているのかと愕然とした。近年、真っ黒なそばが有名だった音威子府(おといねっぷ)駅(宗谷線・北海道)「常盤軒」や、アニメの舞台になり若者の支持も厚かった小山駅(宇都宮線ほか・栃木)「きそば」など、名店が次々と歴史に幕を下ろしている。新型コロナウイルス感染症の影響も残り、各地の駅そばが悪戦苦闘しているのは間違いない。 鉄道旅客の減少が続く地方では、店舗数も減っている。しかし、実は閉店するばかりではない。大手事業者がさじを投げた店舗を個人や中小事業者が継承し、営業を続けるケースもある。野辺地駅(青い森鉄道ほか・青森)「駅そばパクパク」、小野田駅(山陽線ほか・山口)「日の出屋」などだ。 野辺地駅の場合は、駅弁事業者の経営破綻に伴い、JRの系列会社が引き継いだが、それも撤退。その店舗を引き継いだのは、駅前にある焼き鳥店の店主だった。元々の駅弁事業者の本社は仙台で、JRの系列会社は東京。営業拠点は青森県内にもあったが、本社から遠く離れた街の店舗を運営していたわけだ。その点、駅前の焼き鳥店なら駅を乗り降りする人々と身近に接している。土地のニーズに合った小回りの利く運営ができるようになる。大都市集中型から地域密着型へ。これが、近年の地方における駅そばの大きな流れの一つだと言える。 第二の流れは、公共性の高い目的を併せ持つ駅そばの台頭だ。駅そばは店舗での調理が平易である。そのため、障がい者や高齢者の就労支援や、無人化された駅の維持管理、観光客の便宜を図るために観光協会が案内所を兼ねて運営する店などが増えているのだ。豊浦駅(室蘭線・北海道)「ワークランドかっこう出張所」や田上駅(信越線・新潟)「あじさい売店」などがこれに該当する。店舗が減るなかでも新たな可能性は芽吹いている。