障害者の雇用促進 「業務の切り出し」で仕事を生み出す取り組みとは?…働く人は10年で1.5倍 課題は定着化
「求人内容の具体化」定着のカギ
厚生労働省によると、民間企業で働く障害者は23年に約64万人と、10年前の1.5倍に増えた。ただ、就職から1年後も同じ職場で働く割合は、身体障害者と知的障害者で6割台、精神障害者で4割台との調査結果もあり、定着が課題だ。 障害者雇用の支援会社「パーソルダイバース」(東京都)によると、雇用のミスマッチを防ぐポイントは「求人内容の具体化」だという。 例えば、電話対応が必要な業務で募集する場合、社内の内線だけなのか、外線への対応も必要なのか、詳細に書くといったイメージだ。知らない人と話すのが難しい障害者もいるためだ。 同社で雇用支援にあたる公認心理師の田村一明さん(35)は「障害者は、得意なことと苦手なこととの差が特に大きい。この事情を理解した上での求人が就職後の定着につながる」と語る。
雇用主に代わり 働く場提供…代行ビジネスに需要「理念に外れる」課題も
障害者を雇用する企業に代わり、農園など実際に働く場を別に用意する民間サービスがある。「雇用代行ビジネス」と呼ばれ、障害者に任せる業務の切り出しに苦労する企業からのニーズは高いが、「その企業の社員と一緒に働くという障害者雇用の理念から外れる」との指摘もある。 東京都内の建設資材会社が運営する農園の一つ、神奈川県愛川町のビニールハウスでは障害者135人が週5日、同社の契約社員らの指導を受けながら野菜や果物を栽培し、主に地元のスーパーなどに出荷している。 実際の雇用主はIT企業や学校法人など21団体に分かれており、同社は「所属先の担当者には月1回は来園してもらうなど、丸投げされた形にならないようにしている」と説明する。 代行ビジネスの需要は高まりつつある。企業には一定数以上の障害者を雇用する義務があり、国はその人数を増やしてきたのに対し、企業側の業務の用意が追いつかないためだ。 一般社団法人「日本農福連携協会」が2月に公表した報告書によると、こうした「農園型障害者雇用」の利用企業は800社以上あり、約1万人が働く。一部について「生産物が販売されず、障害者がやりがいを実感できない」「企業が障害者の管理を農園に任せきりにしている」との課題を挙げる。 協会は「国は働く障害者数の増加だけではなく、雇用の質にも注目していくべきだ」とする。(2024年10月8日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)