電動キックボードのLuup、自治体とのサービス共同運営を開始。地方の「設置して」要望に対応
要望多数でも地方進出できなかったわけ
ループは現在、国内10都市に約8100の専用駐輪場(ポート)を設置する。 東京や横浜、福岡など人口が多い地域にポートを密集させることで、近距離移動に適したサービスを提供してきた。一方で、地方を中心に自治体や企業から「ポートを設置してほしい」というリクエストを月に470件以上受けてきたという。 ループの岡井代表は 「本当は地方の方が移動課題が多いにもかかわらず、これまで展開できなかった。弊社の資金体力、そして政府との対応事情的に難しいという回答をしておりました」 と話す。 ループがこれまで地方に積極進出ができなかった理由は、採算性の問題だけではない。元々、ループのような電動キックボードのシェアサービスは、政府の「新事業特例制度」による実証実験の一環として認定を受けたエリアでしか提供できなかった。 2023年7月に電動キックボードの区分を変える改正道路交通法が施行されたことで、この制約はなくなっている。ループではこの法改正を機に、地方自治体や企業とともに地方展開の手法を試験導入の形で探ってきた。
沖縄のリゾート「非常に良かった」
沖縄県最大規模のリゾートホテル「カヌチャリゾート」では、2023年7月から試験導入を開始した。同施設では現在、6カ所のポートに計23台を導入し、宿泊客と従業員が施設内を移動する手段として使っている。導入開始から約10カ月で合計ライド数は6222回、1日当たりの平均ライド数は20回に上り、施設の担当者は「導入して非常に良かったと思っている」と話す。 今後は施設の外にも利用エリアを広げ、観光スポットや買い物施設間の回遊性向上につなげていきたい考えという。 自治体では北海道美瑛町がオーバーツーリズム対策の一環として移動の選択肢を増やす目的で導入したほか、公共交通の充実に課題を持つ栃木県芳賀町が2024年4月から実証実験に取り組んでいる。 複数の試験導入で一定の手応えが得られたことから、今回正式にサービスとして本格提供するに至った。 「地域の交通課題は一言で表すと似ているが、エリアの人口状態や町の形、人々が移動するピーク時間帯、工場が多いエリアと高齢者が多いエリアでは交通課題の力点が違う。それらにカスタマイズしてしっかり解決していく手段として利用いただくことで、地域住民の移動と、特に観光客の二次交通の課題を支援して町の価値を最大化していきたい」(岡井代表)
土屋咲花