購入「後」の顧客体験がロイヤルティの明暗を分ける⁉ 顧客満足度アップの秘訣を返品・交換支援のプロに聞いてみた
Narvar Japan白石氏(以下、白石氏):海外は日本よりも配送や商品の品質が高くないこともあり、返品率が高い。海外の返品率は小売業全体で16%ほど。ECで見ると20%程度だ。米国では通常の返品フローだけでなく、ECで購入した商品を実店舗に持ちこんで返品できるケースも多く、返品文化は浸透・発達している。
菅本氏:海外では、ある程度返品されることを加味した事業設計をしている事業者が多い印象。たとえば「最低何割は返品される」というのを考慮に入れた上で全体のオペレーションを設計している。米国のアパレルECでは、返品率が40%にのぼるケースも珍しくない。日本は商品の質が高いとか個客都合での返品を許していないという事情もあり、返品率が低い。 ■ 国内はまだ事業成長フェーズ
Recustomer辻󠄀野氏(以下、辻󠄀野氏):日本国内の返品率は、小売全体で3%ほど。アパレルだけで見ると約6%で、そのうち、比較的返品率が高い傾向にある靴カテゴリでも約8%にとどまっている。海外と比べると圧倒的に低い。事業者側は、まずは事業成長、つまりは売上アップに重きを置いているという側面もある。返品スキームの効率化やバックオフィスの整備は二の次になっているのが現状だ。事業全体が伸びてくればバックオフィス分野のリソースも自然と増えてくるので、返品やリバースロジスティクスに力を入れるフェーズにも進むと思う。
辻󠄀野氏:国内では、関東圏をはじめとした政令指定都市に人口が集中している。そうした都市には実店舗がそろっていることも多いため、顧客はある程度商品の想像できている状態でECで購入する。こうした事情も国内の返品率の低さにつながっているのではないかと思う。 海外で返品率が高い理由の一つとして、たとえば米国は国土が広いため、人口の多い都市に住んでいない人もその分多い。イメージのみで購入することになるため、返品率も自然と高くなるのではないか。 ただ、コロナ禍を含むここ数年で良い変化は出てきた。ECと店舗でOMO施策を進める国内企業のなかには、ECで購入した商品でも、店舗で返品を受け付ける施策を始めているところもある。 菅本氏:海外では、事業者側が手配をして購入者の住まいに赴き、返品したい商品をピックアックするケースもある。海外の返品フローでは、「いかに次の購入につなげるか」がポイントとなるので、返品した顧客に向けて次回送料無料などのキャンペーンを展開することが多い。