関東で相次ぐ強盗…犯人グループの特徴とは?生々しい現場から元刑事が紐解く「トクリュウの犯行」「初対面で共謀できていない」
8月以降、関東で相次いでいる強盗事件は、ついに殺人事件にも発展した。リーゼント刑事こと元徳島県警捜査一課警部の秋山博康氏が、各地の事件現場を取材した。 【映像】逮捕された20代容疑者ら(実際の映像) 千葉県船橋市では10月9日、強盗事件が起きた。80代の夫と、70代の妻が住む一軒家に、男2人が押し入って、現金900万円を奪って逃走。夫婦は骨折などのケガをした。 16日5時ごろには、千葉県白井市で緊縛強盗が起きた。被害にあったのは70代の母親と40代の娘で、早朝に押し入ってきた男2人に、手足を粘着テープで縛られ、目隠し状態で暴行を受けた。犯人は現金およそ20万円を奪ったうえ、車を盗み逃走したとみられる。 現場を訪れた秋山氏は「通常の常習的な空き巣犯は、こんな足跡が残るところを絶対に歩かない。闇バイトの素人同士、しかも初めて会ったから共謀できていない」と推理する。捜査関係者への取材では、事件直後、容疑者とみられる男のうち1人が、近くのコンビニで「横浜に行くからタクシー呼びたい」と話しかけていたことがわかった。 16日10時30分には、横浜市青葉区で後藤寛治さん(75)が、自宅で手足を粘着テープで縛られた状態で死亡しているのが見つかった。後藤さんの体には出血と打撲痕が複数あり、自宅からは約20万円の現金が盗まれた。後に、実行役とみられる宝田真月容疑者(22)が逮捕され、「仲間が2人いた」と供述している。 17日7時ごろには、白井市から20キロほど離れた千葉県市川市の一軒家で、72歳の母親から「室内が荒らされている」と通報があった。現場には粘着テープやハンマーが残され、現金や携帯電話、クレジットカード、そして50代の娘の車がなくなっていた。娘は犯人グループに連れ去られ、埼玉県川越市のホテルで監禁されているところを保護される。娘の顔面と全身には打撲痕があった。 市川市の事件では、娘と一緒にいた藤井柊容疑者(26)を現行犯逮捕し、さらにもう1人の実行役である高梨謙吾容疑者(21)が自首した。藤井容疑者は調べに対し、「監禁の見張り役をやっただけ」と話したが、その指紋は船橋の事件現場、横浜の殺害現場のものと一致していた。 各地で相次ぐ強盗事件は、当初は質店の金品が狙われたが、このところは高齢者が住む民家が襲われている。白井市で取材すると、近隣住民が「古いお金や金属はあるか」と聞く、若い男の訪問を受けたと明かした。「昔は“押し売り”、今は“押し買い”」と説明する秋山氏によると、家に入って、間取りやタンス預金を確認して、リストを作成する。リフォーム業者を装ったケースもあるという。 秋山氏はトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)による犯行と断言する。「実行犯は闇バイトで応募した素人で、指示役の指示で行っている。本来の強盗や空き巣は単独犯が多い。複数人だと足がつきやすい。しかも素人が名簿の指示通りやるため、共謀できていない」と分析。 具体例として、ガラスの割り方がずさんで、「職業的な泥棒は、音が出ないようにマイナスドライバーだけで割る。現場にハンマーや粘着テープを残したまま逃げるのは素人だ」と指摘する。「証拠を残さないように計画するが、そういうものが考えられていない」という。 横浜の事件で殺害に至った理由は、「本来は金銭目的で、命が目的ではない。たぶん被害者が抵抗した」と推測する。また指示役が海外にいる可能性を示す。「自分たちに捜査が及ばない。闇バイトで雇った素人がいっぱいいて、それを使い捨てにする」。 さらに、トクリュウの背後には「必ず反社、暴力団の存在がある」そうだ。「暴力団がトクリュウに指示すると、共謀共同正犯で逮捕されるため、稼いだお金を上納させる」。かつてのトクリュウは「特殊詐欺が中心だった」というが、「闇バイトで雇った子は、話術が下手でだませない。電話をかけさせる“ハコ”の家賃も必要なため、強盗に移行した」と解説した。 (『ABEMA的ニュースショー』より)
ABEMA TIMES編集部