「錦秋十月大歌舞伎」開幕、片岡仁左衛門&坂東玉三郎が織りなす「婦系図」ほか
「錦秋十月大歌舞伎」が、昨日10月2日に東京・歌舞伎座で開幕した。 昼の部には、尾上菊之助が初役で挑む「『平家女護島』俊寛」、尾上右近と尾上眞秀が曽我兄弟を勤める「音菊曽我彩」、中村獅童が権三役、尾上松緑が助十役を演じる「権三と助十」がラインナップされた。「俊寛」は、“近松門左衛門歿後三百年”と冠されており、菊之助のほか、丹波少将成経役で中村萬太郎、海女千鳥役で上村吉太朗、平判官康頼役で中村吉之丞、瀬尾太郎兼康役で中村又五郎、丹左衛門尉基康役で中村歌六が出演者に名を連ねている。 「音菊曽我彩」は、曽我兄弟の仇討ちを題材にした曽我ものの舞踊劇として、松岡亮が脚本を担い、新たに立ち上げる作品で、兄弟の敵となる工藤左衛門祐経を、尾上菊五郎が勤める。なお、昨日10月2日は、菊五郎の82歳の誕生日。秦野四郎役の中村橋之助は「折しも当月は祐経様の誕生月。その長寿を祈る菊酒をそれなる菊で調えん」と、菊五郎の誕生日にかけたセリフを発し、会場を盛り上げた。「権三と助十」は、1926年に歌舞伎座で初演された作品。作中では、駕籠舁の権三と助十が住む、神田橋本町の裏長屋を舞台にした物語が展開する。そこでは、長屋総出で夏恒例の井戸替えが行われていたが、権三が参加していないことに助十が腹を立て……。 夜の部は、片岡仁左衛門と坂東玉三郎による「婦系図」、玉三郎と市川染五郎による「『源氏物語』六条御息所の巻」が展開する。「婦系図」は、泉鏡花の小説を原作に、泉自身が手がけた戯曲。ドイツ語学者の早瀬主税(仁左衛門)は、師である酒井俊蔵(坂東彌十郎)に隠れて、柳橋芸者のお蔦(玉三郎)と世帯を持っていた。2人の関係を知った酒井は、芸妓の小芳(中村萬壽)がとりなすのも聞かず、主税に「俺を棄てるか、婦を棄てるか」と迫る。「婦を棄てます」と答えた主税は、月明かりの美しい晩、お蔦を湯島天神へと誘い……。仁左衛門扮する主税と玉三郎扮するお蔦の切ないやり取りに、会場はすすり泣きが鳴り響いた。 「『源氏物語』六条御息所の巻」では、玉三郎が六条御息所、染五郎が光源氏を勤めるほか、中村時蔵が葵の上役、上村吉弥が女房中将役、中村歌女之丞が左大臣家の女房衛門役、中村亀鶴が比叡山の座主役、彌十郎が左大臣役、萬壽が北の方役を演じる。光源氏との子を身ごもる葵の上は、生霊により謎の病に臥していた。そんな中、光源氏は六条御息所の館を訪れる。2人は花見や連れ舞に興じるが、六条御息所の表情は晴れず……。玉三郎は、六条御息所の情念と揺れ動く心情を繊細に描き、観客の心を惹きつけた。公演は10月26日まで。 ■ 「錦秋十月大歌舞伎」昼の部 2024年10月2日(水)~2024年10月26日(土) ※公演終了 東京都 歌舞伎座 □ スタッフ 近松門左衛門歿後三百年「『平家女護島』俊寛」 作:近松門左衛門 「『音菊曽我彩』稚児姿出世始話」 脚本:松岡亮 「『権三と助十』神田橋本町裏長屋」 作:岡本綺堂 □ 出演 近松門左衛門歿後三百年「『平家女護島』俊寛」 俊寛僧都:尾上菊之助 丹波少将成経:中村萬太郎 海女千鳥:上村吉太朗 平判官康頼:中村吉之丞 瀬尾太郎兼康:中村又五郎 丹左衛門尉基康:中村歌六 「『音菊曽我彩』稚児姿出世始話」 曽我一万:尾上右近 曽我箱王:尾上眞秀 小林朝比奈:坂東巳之助 秦野四郎:中村橋之助 化粧坂少将:尾上左近 鬼王新左衛門:中村芝翫 大磯の虎:中村魁春 工藤左衛門祐経:尾上菊五郎 「『権三と助十』神田橋本町裏長屋」 権三:中村獅童 助十:尾上松緑 助八:坂東亀蔵 権三女房おかん:中村時蔵 小間物屋彦三郎:尾上左近 願人坊主雲哲:市村橘太郎 願人坊主願哲:澤村國矢 左官屋勘太郎:中村吉之丞 猿廻し与助:中村松江 石子伴作:河原崎権十郎 小間物屋彦兵衛:中村東蔵 家主六郎兵衛:中村歌六 ■ 「錦秋十月大歌舞伎」夜の部 2024年10月2日(水)~2024年10月26日(土) ※公演終了 東京都 歌舞伎座 □ スタッフ 「『婦系図』本郷薬師縁日 柳橋柏家 湯島境内」 作:泉鏡花 演出:成瀬芳一 「『源氏物語』六条御息所の巻」 脚本:竹柴潤一 監修:坂東玉三郎 演出:今井豊茂 □ 出演 「『婦系図』本郷薬師縁日 柳橋柏家 湯島境内」 早瀬主税:片岡仁左衛門 柏家小芳:中村萬壽 掏摸万吉:中村亀鶴 古本屋:片岡松之助 坂田礼之進:田口守 酒井俊蔵:坂東彌十郎 お蔦:坂東玉三郎 「『源氏物語』六条御息所の巻」 六条御息所:坂東玉三郎 光源氏:市川染五郎 葵の上:中村時蔵 女房中将:上村吉弥 左大臣家の女房衛門:中村歌女之丞 比叡山の座主:中村亀鶴 左大臣:坂東彌十郎 北の方:中村萬壽 ※無断転載禁止