“国立決戦”制してパリへの切符獲得! 試練のアウェーから中3日、なでしこジャパンは何を変えたのか?
機能した3バックで個が躍動。北川・上野が先制点に絡む
2つの変化がもたらす効果は、試合開始から顕著に表れた。初戦よりも前への圧力を強めてきた北朝鮮に対し、日本はダブルボランチの長谷川唯と長野風花が中盤でスペースをコントロール。選手同士の距離が近くなり、初戦は孤立していたトップの田中美南を起点に前線のコンビネーションが復活した。「フォワードの田中選手との絡みや、自分が真ん中から抜けることでスペースが空いてくることも分かっていました」という上野が左サイドで起点となり、積極的にシュートを放った。 左サイドに入った北川も、上野と長くプレーしてきたかのような呼吸を見せ、タイミングのいい攻撃参加でチャンスを創出した。 「(上野)真実さんとはU-20の時も近い距離でプレーしていたので、本当にやりやすくて、通じ合っている感じがしました。周りを見ると、今まで(年代別代表などで)一緒にプレーしてきた選手も多く、声を掛け合いながらやれたので、徐々に自信が生まれていいプレーが出せたと思います」(北川) 前半26分。北川が蹴ったフリーキックの流れから先制点が生まれた。ゴール前で熊谷が競り、上野が頭で折り返したボールを田中がバックヘッドで合わせる。ボールはクロスバーを叩き、こぼれ球に高橋はなが素早く詰めてゴールネットを揺らした。このゴールで北朝鮮のギアも上がり、44分にはチェ・クムオクに決定的なシュートを許す。だが、山下がゴールライン上で間一髪かき出し、ゴールを死守した。 後半は北朝鮮に押し込まれる時間帯もあったが、初戦で狙われた中盤の穴は完全に塞がれていた。空中戦を制し、縦パスをことごとくインターセプトした南はこう振り返る。 「私も(高橋)はなも(熊谷)紗希さんも、(3人のセンターバックが)すごく強く(球際に)いくことができました。3バックはワールドカップからの積み重ねで距離感よくプレーできていたので、うまくはまったと思います。高さの部分では初戦も勝てていたので、自分かはなが自信を持って競りにいって、周りの選手たちはセカンドボールを拾う意識で準備してくれていました」 組織が噛み合えば、個の強さは自ずと生きてくる。77分には、長野が針の穴を通すようなスルーパスを清水に通した。清水は対峙したパク・シンヨンをまた抜きでかわしてクロス。これを藤野あおばが頭で押し込み、リードを広げた。それは、長野が狙い続けていた形だった。 「相手は(ポジションの)ミスマッチが苦手という分析もあって、前には強いけど、ちょっとずらされたところが弱いことは初戦で感じていました。初戦はその距離感に人がいなくてボールが入らなかったんですが、そこを修正できて、3人目を使えば必ずチャンスができるとイメージしていました」 81分に一瞬の隙をつかれて1点を返されるものの、最後まで粘り強く戦い抜いた日本に、勝利の女神が微笑んだ。