“国立決戦”制してパリへの切符獲得! 試練のアウェーから中3日、なでしこジャパンは何を変えたのか?
ワールドカップ以来の3バックと、変化した左サイド
第2戦で、池田太監督は初戦から2つの大胆なテコ入れをした。一つが、4バックから3バックへの変更だ。 「相手のフォワードがアンカー(熊谷選手)の横に落ちてきて、ディフェンダーがボールを奪えない状況が続いたので、サイドバックも数的不利で対応しなければならない状況でした」(山下) 「初戦は(熊谷)紗希さんの脇のスペースを使われて、センターバックが強くいけないという現象が起きていました」(南萌華) これらの課題に対して、初戦後は選手間ですぐに対策が話し合われた。北朝鮮が狙ってくる4-3-3の構造的な急所を塞ぎ、かつ攻撃も活性化させるには――。そこで選手から池田監督に提案されたのが「4-3-3から3-4-3への変更」だった。 3-4-3は攻撃時には前線に人数をかけやすく、組み合わせよっては流動性も生まれやすい。そして、守備時には5バックで相手の攻撃を跳ね返すことができる。日本は昨夏のワールドカップでこのフォメーションを使い、優勝したスペインを4-0で破るなど、鋭いカウンターで個を躍動させた。だが、ベスト8で敗れたスウェーデン戦のように、重心が下がると押し込まれるリスクもはらむ。 池田監督は「3バックだけで予選や、その先のパリ五輪は勝ち抜けない」と判断。戦い方の幅を広げるために、2次予選と親善試合を4-3-3のフォーメーションで戦い、経験値を上げてきた。 限られた代表活動の中で3バックを復習する時間はほとんどなかった。だが、「システムを(3-4-3に)変えるストーリーは頭の中にあった」という池田監督。負ければ女子サッカーの火が消えるかもしれない大一番を前に、選手たちからの提案も背中を押したようだ。 もう一つの大きな変化は、左サイドの構成だ。 3-4-3では、4の左右にあたる両ウィングバックが生命線となる。右は清水梨紗が不動のレギュラーだが、左は遠藤の不在が大きな穴となっていた。池田監督はそのポジションに、追加招集の北川ひかるを抜擢。宮澤の不在で空いた左ウイングには、上野真実を起用した。それぞれ所属クラブでは本職のポジションで、WEリーグでは好調を維持している。ただし、2人とも今回の招集は2022年7月の東アジアE-1選手権以来、約1年半ぶりで、池田ジャパンでは3バックを戦った経験がない。チームの底力が試される決断となった。 北川が先発を言い渡されたのは、試合前日だったという。だが、今思い返せばその表情に気負いはなく、「もし試合に出たら?」という質問に、リラックスした雰囲気でこう答えていた。 「この(国立競技場の)ピッチで練習をして、明日(試合当日)は緊張するだろうなと思ったんですけど……自分がどれだけできるか楽しみです。緊張を超えてゾーンに入って、いいプレーがたくさんできたらいいなと思っています」(試合前日・北川)