大量の紙が必要だった「源氏物語」執筆 清書用だけで2355枚も? 「許したものしか残されない」作品
紫式部を主人公とした大河ドラマ「光る君へ」。道長が贈った越前和紙に、まひろが『源氏物語』を記したり、修正したりするシーンも盛り込まれています。あれだけの長編物語を描くには、どれだけの紙が必要だったのか…。平安文学を愛する編集者・たらればさんと語り合いました。(withnews編集部・水野梓) 【画像】「光る君へ」たらればさんの長文ポスト 放送の1年「情緒がもつのか…」
大量の紙が必要だった『源氏物語』執筆
withnews編集長・水野梓:最新回では、藤原道長(柄本佑さん)からの依頼を受けて彰子さま(見上愛さん)のもとにまひろ(吉高由里子さん)が出仕していきました。そして道長を導いてきた安倍晴明(ユースケサンタマリアさん)が没しましたね。 たらればさん:安倍晴明が死去したのは寛弘2年(西暦1005年)9月のことですね。 紫式部の出仕については、同年12月という説があります。3年後の西暦1008年秋頃には彰子さまのところで働いていて『紫式部日記』を書き始めていますね。 水野:今後、『源氏物語』の続きを読むため、彰子さまのもとに一条帝が通って仲良くなって、皇子が生まれるはず…ですもんね。 たらればさん:紫式部日記によると、紫式部は第一子出産直後に彰子さまと『源氏物語』の写本づくりをしています。そこに道長が筆や硯を差し入れる。 私は「世界最古の同人誌づくり描写」だと考えているんですが(笑)、後宮でせっせとつくるわけですよ、コピー本を。そして一条天皇に差し上げる……このくだり、『光る君へ』でぜひ取り上げてほしいです。 水野:大河ドラマでは、「物語を書きたい」というまひろが、道長に紙を送ってほしいと頼んでいましたよね。源氏物語の執筆に必要な紙の量ってどのぐらいだったのでしょうか。 たらればさん:歴史学者で『光る君へ』の時代考証も務める倉本一宏先生の『紫式部と藤原道長 (講談社現代新書)』によると、 <『源氏物語』は全編五四巻で、数え方にもよるが九四万三一三五字である(改行は考慮に入れていない)。これを記すためには六一七枚の料紙が必要となる。内訳は、「桐壺」巻から「藤裏葉」巻までの第一部が四三万九四六五字で二九一枚、そのうち a系だけで一六五枚、「若菜上」巻から「幻」巻までの第二部が一九万三八五一字で一二五枚、「匂兵部卿」巻から「夢の浮橋」巻までの第三部が三〇万九八一九字で二〇一枚である。> つまり、清書用だけで617枚。そのあと倉本先生が引用ポストしてくれていて、一枚の紙を袋とじにして、表だけに400文字を書いたら2355枚が必要と補足していただきました。