「発達障害」を乱用する風潮にモヤモヤ 自閉症児の母が覚える違和感と憤り
ライター、イラストレーターとして活動するべっこうあめアマミさんは、知的障害を伴う自閉症がある9歳の息子と、きょうだい児(障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる子ども)の5歳の娘を育てながら、発達障害や障害児育児に関する記事を執筆しています。 【画像】「発達障害」という言葉の重みを知って! 一昔前に比べ、今は「発達障害」という言葉が身近になってきました。この言葉が広まることは良いことですが、逆に、安易に使うことで弊害も出てきているのではないでしょうか。今回は、アマミさんが「発達障害」という言葉について、日々思うことを紹介します。
「発達障害」の勝手なイメージが一人歩き?
毎年、4月2日から4月8日は、「発達障害啓発週間」です。これは、同月2日の「世界自閉症啓発デー」を起点に、自閉症をはじめとする発達障害について、社会全体の理解を深める目的で定められたものです。この期間は毎年、シンポジウムが開催されるほか、東京タワーや大阪城といった、国内の代表的な建物が青色にライトアップされるなど、さまざまな啓発活動が催されます。 そのかいもあり、世間には「発達障害」「自閉症」といった言葉がよく知られるようになってきたのではないでしょうか。 一方、最近では、「発達障害」という言葉だけが一人歩きし、あまり意味を深く理解しないまま、安易に「発達障害ではないか」と他人を断定する人も多くなっているのではないかと思うのです。 「ちょっと変わっている」「考え方や行動が極端」「空気が読めない」など、「普通」から少しでも離れているように感じたらすぐに発達障害を疑う。 自分と合わない人に対して、相手のことをよく知りもしないのに衝動的に「発達障害」とやゆする。 そういった言動が、現実世界でもネット上の世界でも、散見されます。
本当に知識がある人ほど、安易に使わない言葉
発達障害とは、発達障害者支援法において、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎(はん)性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。 確かに、上記の定義の中に含まれる障害がある人の中には、考え方や行動が極端な人や、一風変わった独特の空気感を持つ人もいると思います。著しく注意力が欠けていたり、多動傾向があったりする人もいるでしょう。 しかし、それらは全て、発達障害がある人が抱えているかもしれない特性の一つに過ぎません。 発達障害がある全ての人に当てはまるものでもなければ、発達障害がない人にだって、表れる特性だと思います。 つまり、発達障害は、定義づけしようとすると非常に幅が広い障害ですし、「グレーゾーン」という言葉もあるくらい、あいまいな部分が多い障害です。素人が安易に「あなたは発達障害だ!」などと、断定できるはずがないのです。 本来、発達障害などの障害名の判断は、医師しか行うことができません。そのため、たとえ障害に詳しい支援者の人でも、安易に障害名を示唆することはしません。 私の息子には自閉症がありますが、この診断名も、医師以外の人からはかたくなに告げられませんでした。 以前、障害について多少知識がある人から、息子について、「自閉症ではないか」「知的障害だと思う」などと言われたことがありましたが、こういうことを断定形で直接本人や家族に言う人ほど、知識は浅いものです。 本当に発達障害に対する知識がある人ほど、安易に障害名は出さないと感じています。