林芳正官房長官「なくなって構わない税収など存在しない」…103万円の壁、ガソリン暫定税率を語り尽くす
暫定税率が最初にできたとき、もともとは道路向けの特定財源でした。それを一般財源化するとき、実は谷垣(禎一)さんが税調の座長で、私が事務局長で、かなり苦労しながら進めたのを覚えています。 今まで使い道がカチッと決まっていたものを一般財源化したのですが、道路の需要がその分なくなったわけではありません。今回もそういうところをどうするのか、考えながら議論されるべきだろうと思います。 青山:今でも貴重な財源の1つだと。
林:そうですね。このお金はもう要らなくなった、という税は、たぶんないでしょう。毎年財政赤字で、毎年国債を発行して予算が編成されているので、これは結局将来世代の負担になっていく。その財政の再建にずっと取り組んできて、なんとか来年プライマリーバランスが黒字になるかもしれないというところまで、長い道のりで来ました。 財政黒字でお金が余っているからこれくらいのマイナスは問題ないよね、という状況では、決してない。これは根底に据えて議論しなければならないことだと思っています。
■「有事」を想定した余力も必要 青山:国民民主党などは「今はデフレからの脱却のときだから、今こそ減税で国民生活に対する補填をして、景気を刺激するべきだ」といった主張をしています。この訴えには、林さんも賛同されますか? 林:今も将来も、デフレからの脱却はとても大事なテーマですし、われわれもずっと取り組んできています。ただ一方で、財政の話はつねに考えていかないと、例えばコロナ禍のような「有事」のときに、しっかりとした対策をするのにはお金が要ります。
能登半島地震含め、災害も頻発しています。そうすると、財政の余力というのはあったほうがいいと、私は思います。そういう議論は予算委員会でも、国民民主党はもちろん、各党でされています。補正予算に関しても「なぜこんなに大きな予算にするんだ」と指摘されるくらいです。 この点は各党でコンセンサスがあると思いますし、総論はみんな賛成なんですよ。一方で各党、「自分たちとしてはこれをやりたい」というものに関しては、何としてもやらなきゃいけないとなる。これをどう調整するかが、まさに税調で議論してきたことです。
各党「これが必要だ」と、それぞれおっしゃる。でも全部足して大赤字、というわけにはいかない。財政についてはつねに考える必要があります。 アメリカが財政再建をやろうとしたときに、「Pay-as-you-go原則」(新規の施策や制度変更で経費を増やしたり減税を行ったりする場合、ほかの経費の削減や増税などの措置をセットで行わなければならないとする制度)が掲げられました。われわれもつねにそういうことを頭に置いておかなければならないと思います。
青山 和弘 :政治ジャーナリスト、青山学院大学客員研究員