「今まで維持してくれたことに感謝」「むしろ20円でもいい」…。わずか2年半で50%の値上げの「うまい棒」、それでも愛される“理由”とは?
うまい棒とガリガリ君、両者に共通する点として、廉価の嗜好品かつ、近年まで価格改定を踏みとどまっていたことがある。どちらもコンビニなどで気軽に手に入れられるが、生活必需品とまではいかない。ふとある日思い出し、衝動的に手を伸ばしたくなる「近いけど遠い存在」だ。 消費者は、うまい棒やガリガリ君の商品だけを買っているのではなく、その背景にある歴史に、ともに育った自分の半生を重ね合わせたストーリーをも買っているのではないか。20円あれば童心に返って、幼き日のノスタルジーを追憶できる。
ある意味で「思い出補正」のようなものがあるからこそ、多少の値上げでは、そのポジションは揺らがない。誰にでも、そんなお菓子があるはずだ。筆者も、小学校低学年のころ、学童保育のおやつで出た「蒲焼さん太郎」や「酢だこさん太郎」などの太郎シリーズが忘れられず、いまも時たま手に取る。 ■食品業界において、消費者は疑心暗鬼になっている 幼少期の思い出が、常に身近にある。思い立った時に、いつでも「あの頃」に帰れる安心感は、多くの人に商品愛を植え付ける。それだけに、値上げしてもなお、残ってくれるだけでありがたいと感じさせるのだろう。
世間には、突然姿を消してしまう商品も少なくない。例えば2024年3月には、明治のキャンディー「チェルシー」が販売終了となった。市場環境や顧客ニーズの変化による収益性の悪化を理由としていたが、ファンからすれば「買い支えの余地はなかったのか」「SOSサインが発せられていれば」といった無念が残っただろう。 とはいっても、人気商品の値上げが、何でもかんでも支持されるわけではない。その代表例が、価格は維持しつつ内容量を減らす、いわゆる「ステルス値上げ」だ。誠実さを欠いているとして、とくにネット上では嫌悪感が示されることが多い。
2023年1月には、山崎製パンの人気商品「薄皮」シリーズの内容量が、5個から4個になって、大きな反発を呼んだ。この時は、事前に個数変更が告知されていたことから、比較的良心的な対応だったと言えるが、市場に出回る商品には「商品パッケージを見て、初めて内容量変更に気づく」といったケースも珍しくない。 同様に、SNS上では「コンビニ弁当の上げ底容器」が話題になることも多々あるが、これらは誠実さを欠いた裏切り行為だと、消費者の目には映る。とくに食品業界においては、そうした先例が多数あることから、消費者は疑心暗鬼になっている。だからこそ、「だまされた」と感じさせないコミュニケーションが重要なのだ。