平成の将棋史(上)前人未到の七冠独占 「羽生世代」の席巻
危機と復活の後、ついに27年ぶり無冠に
羽生さんは三十代に無冠に陥る危機がありました。森内さんが三冠となったとき、羽生さんは王座一冠のみとなり、羽生時代の危機が叫ばれました。しかしその後、森内さん、谷川さんからタイトルを取り返し、平成17(2005)年には四冠王に返り咲きます。この一度失ったタイトルをすぐに取り返す強さが羽生さんの「凄み」でした。 しかし、平成の終わりに向かって、終盤で着地に失敗する「らしくない」負け方が少しずつ見られるようになります。平成29(2017)年には若手世代に敗れ、王位と王座を失冠。竜王は奪取したものの、同30(2018)年には名人奪取に失敗し、棋聖も失冠、そして最後の竜王を失い無冠となります。 古作さんは「通常の公式戦でも大変なのにタイトル戦の消耗はさらに激しい。羽生さんも48歳。昨年末の竜王戦も対局2日目の午後に崩れる場面が目立った。やはり脳の疲労がくる時間帯があるのではないか」と、長年タイトル戦に出続けた“勤続疲労”の影響を指摘します。一方で、「テクニカルな面はまだ問題はない。大山十五世名人も56歳でタイトルを獲得している。現在進行しているA級順位戦でも首位争いをしており、羽生さんが今後しばらくはタイトル戦に登場する可能性はまだまだある」。 数々の記録を塗り替えた羽生さんが、新しい元号の時代に、平成でやり残した「タイトル獲得100期」を達成できるのか注目されます。 次回では「進化した序盤戦術とAI 『藤井フィーバー』の衝撃 」などをテーマに振り返りたいと思います。