平成の将棋史(上)前人未到の七冠独占 「羽生世代」の席巻
谷川さんの巻き返しと「羽生世代」台頭
一方、平成8年に無冠となった谷川さんは同年の竜王戦、翌年の名人戦で羽生さんからタイトルを奪い返し、復活します。特に名人位獲得は通算5期となり、永世名人(十七世)の資格を得たことも話題となりました。古作氏は「巻き返しを果たした谷川さんの頑張りも光ったと思う。全7タイトルを各1回以上獲得したグランドスラムも羽生さんより先に達成しており、平成の将棋界においてもやはり存在感は大きい」と指摘します。 羽生世代の一人、佐藤九段は平成5年に羽生さんから竜王を奪取して初タイトルを獲得。平成10(1998)年には谷川さんから名人も奪い、その後もタイトル戦線の常連となります。平成14(2002)年からは棋聖位を6連覇し、平成18(2006)年には「永世棋聖」の資格も得ました。 森内九段の初タイトルは意外にも平成14年、31歳での名人獲得でした。しかし同15(2003)年から16(2004)年にかけては、竜王、王将、そしていったん失った名人位をライバル羽生さんから奪い、三冠王(竜王・名人・王将)となりました。平成19(2007)年には名人獲得5期を達成し、永世名人(十八世名人)の資格を得ました。特に羽生さんの永世名人を二度阻止(平成20年に羽生さんは十九世名人の資格を獲得)したことでも知られています。 羽生世代について古作氏は「27年間タイトルを連続して保持した羽生さんが平成の将棋界の中心だが、ライバルの佐藤さん、森内さん、郷田さんたちが強かったことも大きい。同世代が頑張っていることによる励みと、油断すればタイトルを奪われるという危機感を抱かせたのではないか」とみています。羽生さんの下の世代では、渡辺明棋王が竜王戦で9連覇を達成(10連覇を阻止したのは森内さん)した以外は大きな活躍が見られず、平成の終わりにようやく若手棋士がタイトルを少しずつ取り始めるまで、平成棋界は羽生世代を中心に回りました。