惨敗続きのラグビー日本代表は「ひどく厄介な事態」に陥っている…27年W杯へ向けジョーンズHCがすべきこととは?
ラグビー日本代表が2024年最後のテストマッチを惨敗で終えた。敵地での24日のイングランド戦は14ー59の大敗。第二次エディー政権1年目の戦績はテストマッチ4勝7敗である。ベスト8以上との目標を掲げる2027年のW杯に向け、課題は山積。30年以上に渡って日本ラグビーを追う、スポーツライターの永田洋光氏がジャパンの現在地を分析する。 【画像】女子ラグビーも圧巻ド迫力!!! ◇ ◇ ◇ 2015年以来、9年ぶりにジャパンの指揮を執ったエディ・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が提唱する「超速ラグビー」は、それなりにインパクトがあった。 相手より速く動き、速く判断を下して、空いたスペースを攻める。 それがコンセプトだが、6月22日のイングランド戦でお披露目されたときは、立ち上がり20分間のほとんどを攻め続けてインパクトを残した。 しかし、有効に得点を重ねられず、イングランドに対応されると形成は逆転。17対52と大敗した。 「第二次エディ・ジャパン」最初のシーズンとなった今季もまた同様だった。 時が経つにつれて、対戦相手に研究されて輝きを失い、テストマッチは4勝7敗。対戦時にランキング上位のチームを倒したのは9月15日のサモア戦のみで、つまり、世界を驚かせたのは最初だけだった。 この秋はニュージーランド、フランス、イングランドと、世界ランク上位の強豪国と戦ったが、すべて50点以上の大量失点。超速のメッキがはがれた印象を国内外に与えた。 要因はいくつもある。 27年のW杯オーストラリア大会を見据え、これまで代表に選ばれていたベテランをほとんど起用せず、若手を大量に抜擢したこと。そのため経験値が低く、試合の勝負所を見極められなかった。 負傷者が相次ぎ、伸び始めた"未来の主力"が次々と離脱。チームの骨格も揺らいだ。 司令塔の10番でも負傷者が続出。李承信→松田力也→山沢拓也→立川理道→松永拓朗→ニコラス・マクカランと6名が務めることになり、これではゲーム運びが安定しないのも無理はない。 選手たちに超速を徹底させるため、練習の多くがアタックに割かれ、組織防御を整備できなかったこともマイナスに働いた。キックへの対処もきっちりと遂行できず、攻守ともに対戦国から見劣りした。 27年にW杯トップ8入りを目指すと言われても、首をかしげざるを得ない状況なのだ。 では、どうすればジャパンはプラスの方向に転じるのか。 考えられるのは、リーチ マイケルを筆頭に、今季代表に選ばれなかった松島幸太朗や稲垣啓太といったベテランを呼び戻し、抜擢した若手から選んだ有望株と組み合わせてチームを立て直すことだ。 しかし、自身のコーチング能力に絶対的な自信を持つジョーンズHCが、来季もさらに若手の起用にこだわることは十分に考えられる。 ひどく厄介な事態なのである。 それを解決するには、ジョーンズHCの口から具体的に「ジャパンが勝つための方策」が示される必要がある。 11月9日に対戦したフランスは、立ち上がりからジャパンを上回る超速ラグビーを仕掛けてトライを重ねた。 24日に対戦したイングランドは、超速ディフェンスでジャパンのアタックを分断してボールを奪い、そこからトライを重ねて前半で勝負を決めた。 超速ラグビーを80分間続けることは物理的に不可能だが、そのなかでメリハリをつけて、ジャパンに力の差を見せつけたのである。 こんな試合が続けば、選手たちに迷いが生じないか懸念される。 確かに若手の発掘や、トライの質では成果もあったが、肝心の勝負に負けては選手たちの経験値は上がらない。なにより、ジョーンズHCを信じてハードワークに励む選手たちが、勝利を確信できないような心理状態に追い込まれれば、チームは迷走する。 だからこそ、27年に向けて前向きに歩むためには、「明確で具体的な勝利への青写真」が示されなければならない。 それが第二次エディ・ジャパンの、来季の課題なのである。 (永田洋光/スポーツライター)