<インド>星空に浮かんだ仏陀 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
日が沈み、マハボディ寺の境内が電飾で色鮮やかに彩られる。とはいえ、電球の数も少なく、ピンクや緑で点々と飾られたその様は、 なんだか寂れた歓楽街を連想してしまうほど俗っぽい。聖地たるべき神聖さからはずいぶんとかけ離れた趣だ。
菩提樹の前に、青い豆電球で包まれた黄金の仏像が設置されていた。デパートの玩具売り場かゲームセンターのような、日本の寺では考えられないようなちゃらけた装飾ではあるが、そんなことは気にも留めずに、人々はその前で真面目に手を合わせ、経を唱える。電圧の関係だろうか、この仏像、時々光が弱くなってその姿を消し、再びふわっと浮かび上がってくる。見ようによっては、星空のちりばめられた宇宙に仏陀が浮かんでいるようで、「解脱」を象徴しているかのようにも思えるが…。いやいや、さすがにそこまでの意図をもって飾られたわけではないだろう。それでもどういうわけか、魅せられてしまう黄金の仏陀であった。 (2014年11月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.