「黙秘権」の侵害は“他人事”ではない…「推定有罪」を決めつける検察の"説得"が冤罪を生み出す理由
黙秘権が強くなると治安が悪化する?
―――黙秘権が強くなり過ぎると犯罪者を処罰するのが難しくなり、治安が悪化するのではありませんか? 川崎弁護士:法務省や警察庁はそういった主張をします。しかし、実際には、黙秘と治安は無関係です。 たとえば「取り調べの可視化をすれば治安が悪くなる」といわれていましたが、実際に可視化法が施行された2019年以降、治安が悪くなっている様子はありません。アメリカやイングランドでも、取り調べのあり方と治安が結びついているような研究は目にしたことがありません。 また、有罪が立証できるかどうかは、そもそも自白の有無では決まっていません。メールや防犯カメラ映像などのデジタルデータが多く保全されている現在では証拠の数も増えており、「自白がなければ立証できない」という事件も少なくなっているでしょう。 アメリカの刑事事件の95%は司法取引で解決します。ロンドンの防犯カメラの数は日本の比ではありません。これらにも冤罪を生み出す可能性やプライバシー侵害のおそれはあるので注意は必要ですが、現代では取り調べを重視することは効率が悪く非科学的だといえます。 なにより、黙秘権は全ての人に与えられた「権利」です。「黙秘したら取り調べをやめる」というのが基本であることを再認識して、すっかり弱められてしまった黙秘権を取り戻すことが大切だと考えます。
弁護士JP編集部