新妻聖子、舞台で戦い続けてきたミュージカルの歌姫が挑んだ新境地はJ-POP
ミュージカル女優として、また歌手として、唯一無二の歌声で知られる新妻聖子。デビュー15年目にして新境地に挑み、周囲もビックリという。ワンアンドオンリーなメロディーメーカー、さかいゆう全面プロデュースで新曲「アライブ」をリリースしたのだ。ミュージカルの歌姫と呼ばれてきた従来のイメージを覆すようなポップスで、彼女はどこを目指していくのか?
テレビやCDの音楽を聴いて育った私の永遠のあこがれは「ポップス」
「私、さかいゆうさんのファンだったんです。曲もすてきで、シンガーとしても天才だなって。私は最初からミュージカルを観て育った人ではなく、普通にテレビから流れてくる音楽や、CDショップに並ぶ音楽で育ったので、ポップスは永遠のあこがれ。さかいさんにプロデュースしていただけたら、新たな音楽性を引っ張り出してもらえるかなと」 以前、所属事務所を移籍してまもないころインタビューする機会があった。そのとき彼女は自らを「戦士」と称した。明日の舞台のために生きる戦士なのだと。それから3年が過ぎ、ますます戦いは拡大しているようだ。 「長くいい歌を歌い続け、多くの方とその時間を共有することが目標。ミュージカルで居場所を作っていただき、いろんな方に応援していただけるようになった。今度はいただいた財産を持ってより広い世界で、いままで出会えなかった人たちと出会いたい。常にいまの居場所に甘んじず、いろんなところへ出て行きたい。失敗も挫折もありますが、そうしないと新しい世界は見ることができないので、扉をどんどん開けていきたいです」
痛みをともなう「生まれ変わり」よりも「停滞する」ことのほうが怖い
さかいゆうとのコラボレーションも、新しい扉。レコーディングは、刺激と発見に満ちたものだったという。 「面白かった。1回つるっと歌ったら、『うーん、うまいね。でも、あんまりうまくなく歌ってみて』(笑)。それで、Aメロの歌詞を全部カタカナに書き換えて渡してくださって。日本語がよくわからない、カタカナ読みみたいな感じで歌ってみてって」 まったく違う歌唱になった。 「ミュージカルは感情と表現ありきで、役柄の人物を生きて、その当事者感覚で歌う。でもポップスって、当事者はリスナー。歌手も当事者ではありますが、リスナーとシンガーの境目があまりない。表現の仕方がぜんぜん違うんだっていうのを、さかいさん流の面白い方法で教えていただいて、成果は目を見張るものがありました」 歌い手として一つのスタイルを確立しつつある感のあった新妻聖子だが……。 「レコーディングのあと、いつもやっているオリジナルを歌ったとき別の表現をしたくなっている自分がいて、ああこれだよね、って。どこかマンネリ化していた部分もあると思うんです。新妻聖子の歌ってこんな感じだよねっていうのがなんとなく形として出来上がってきたこのタイミングで、なかなかストレートに新たな価値観を提示してくれる人っていない。だから本当にありがたくて」 外からの刺激を受けて、常に進化し続ける。それが、戦士たる所以か。 「生まれ変わるって痛みもともなうことですが、私はそのまま停滞することのほうが怖い。どんどん新しいものを吸収して、いま生きている音楽の世界に生きていたい。普遍的な部分の原型はとどめながら、でもいまの新しい、若い人が聞いても『ああいい歌だね』って思ってもらえるようなラインを常に探っていたい。大人の音楽だからよくわからない、っていうところに安住したくない。いい歌って、どの世代が聴いてもいい歌のはずです」