オマー・アポロが語る坂本龍一への深い敬意、「新しい音楽」を作るためのヴィジョン
フランク・オーシャンとの接点、歌とサウンドを通じて表現するもの
―今作『God Said No』は失恋をテーマにした楽曲が多く収録されていて、怒りや悲しみといった感情が歌声からも強く伝わってきます。これまで以上にボーカルが強く印象に残る作品だと思いますが、歌い方や表現の仕方の変化についてご自身ではどうお考えですか? オマー: そういった感情を音楽で表現したかった。どこか自分の居場所を失っている感じがしていて、だからパフォーマンスではそういうふうに歌いたかった。そもそも、歌うこと自体がすごく好きなんだ。好きなことTOP3に入ってる。歌うこと、食べること、あとは……セクシュアルなことかな(笑)。自分にとって大切なことなんだ。 ―ダンサブルなハウスチューン「Less of You」、エモーショナルなバラード「Empty」など、あなたの作る楽曲はさまざまなジャンルを行き交う幅広いサウンドが特徴的ですが、新作は音楽性の面でどのようなテーマがあったのでしょう? オマー: アルバムの最初の5曲はとてもパーソナルな曲で、いうならオマー・アポロの音楽のすべて。(前作収録の)「Evergreen (You Didn’t Deserve Me at All)」以降は、こう歌いたいとか、こう表現したいっていう気持ちを具現化してきた。今回のアルバムはそんな構成にしたかったんだ。サウンドについては、クラフトワークやエクスペリメンタルミュージックにハマっていたし、あとはケイト・ブッシュ。エクスペリメンタルとポップを持ち合わせたような、ジャンルをクロスオーバーしている音楽に惹かれるんだ。型にはまっていない新しい音楽をスタジオで作るのはワクワクする。そんな気持ちで音楽をやっていきたいし、自分にとって音楽との自然な向き合い方なんだ。 ―「Life’s Unfair」はフランク・オーシャンの未発表曲「No South Point, Miami」がサンプリングされているという噂ですが、この曲に関して何かエピソードがあれば教えてください。 オマー: ああ、そうだよ。クレジットとして入れたかったんだ。 ―つまり、本当なんですね。 オマー: ああ。 ―何か裏話はありますか? オマー: ノーコメントで(笑)。 ―今作のゲストのムスタファなどと共に、彼の故郷のスーダンやガザの紛争に苦しむ人々への支援を目的としたチャリティーライブに参加されていましたが、どのような思いからライブへの参加を決めたのでしょうか? ムスタファとの楽曲「Plane Trees」に込めた思いもあわせて教えてください。 オマー: ムスタファから連絡を受け取ったんだ。ムスタファとダニエル・シーザーの3人でチャリティーライブをやらないかって。もちろん、やろう!って話が進んでいった。ムスタファはすばらしいアーティストであり、作家であり、一人の人間として尊敬してる。発端は彼のアイディアだった。そういえば、彼らはつい最近もチャリティーライブをやっていたよ。あいにく参加できなかったけど、また実現させるなんてすごいと思ってるし、ラインナップもすごくよかった。 ―このあとライブも控えていますが、パフォーマーとして大切にしていることは? オマー: いろんな要素のバランスをとることが大事だと思ってる。例えば、オーディエンスとのエネルギーの受け渡しかな。つまり、オーディエンス。数は関係ない。二人でも2万人でもオーディエンスとつながりを感じることが大事なんだ。まあ、一番はボーカルパフォーマンス。万全な状態ですべての音域を出せるようにすること……あとは、集中することだ。
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