川崎の新たな大器・高井幸大。パリ五輪を見据える俊英CBが垣間見せた素顔と中村憲剛を“怖い”と語った理由【インタビュー前編】
2024年も波は激しいが
濃密な1年を経て迎えたパリ五輪イヤーである2024年。19歳の高井はひとつの目標を立てた。 「チームの中心になる」 誰かにアドバイスをされたわけでなく、オフ期間に特別なキッカケがあったわけでもない。自然と湧き上がった想いだった。常にピッチに立ち、チームを勝たせる存在になる――。自らの立場を見極め、大きな責任感が芽生えた瞬間だったのかもしれない。 背番号もかつて伊藤宏樹(現・川崎強化部)、登里享平(現C大阪)らが背負った伝統の2番を継承した。 登里からは電話をもらい、先輩の言葉をありがたく受け取っていたつもりだが、「マジメに聞け(笑)」とツッコまれたというのが、なんとも高井らしいエピソードだが、誰からも愛され、期待をかけられる彼の現在地が垣間見えるシーンでもあったのだろう。 ただし、強い意気込みの反面、2024年はまたも浮き沈みの激しい歩みを見せている。 リーグ開幕前のACLラウンド16では、クラブとして大会制覇を悲願としていたが、中国の山東泰山に2試合のトータルスコアでまさかの逆転負け。高井は第2戦の試合終了間際の出場にとどまり、「正直出たかった」と悔しさを募らせた。 一方で昨季のリーグ王者・神戸との富士フイルムスーパーカップでは「いつも通りやれば良いと考えていた」と先発し、エースの大迫勇也らを抑え、勝利に(〇1-0)貢献。リーグ開幕の湘南戦でも先発し、力強いディフェンスで、ACL敗退のショックから立ち直ろうとするチームを後押しした(〇2-1)。 しかし好事魔多しと言うべきなのか。続く2節の磐田戦は自身のミスもあってチームは大量失点(●4-5)で敗戦。春先のパリ五輪出場を懸けたU23アジアカップでは優勝に大きく寄与したが、川崎で先発復帰を果たした14節の鳥栖戦ではCKから嬉しいJリーグ初ゴールをヘッドで決めたものの、またも連続失点(●2-5)を食い止めることができなかった。 課題は明確である。 「大体、僕が悪い時はポジショニングに問題がある。(修正には)それ(映像を見る)しかないと思います。だから嫌ですけど見返していますね」 その点では鬼木達監督は、前述の鳥栖戦の練習のあとで、こうも評していた。 「今日も(試合の)振り返りの映像なかで彼(高井)が一番出てきたんじゃないかなと(笑)。そういうものになってしまいましたが、ひとつは大きな大会(U23アジアカップ)から帰ってきた時にトレーニングのなかで、本人とも話しましたが、フワフワしてしまっている部分もあったと思いますが、ひとつ成長としては(鳥栖戦の)ああいうセットプレーでゴールを取れたこと。これまでは触ることはできていたけど、ゴールには結びついていなかった。触ったボールを枠にしっかり飛ばせるようになったことは良かった面です。 ただ、今季のキャンプの時から言い続けているポジションの取り方と言いますか、準備をしなくてはいけないところはまだまだ彼の課題だと感じますし、サボっているわけではなく、やっぱり気付きだと思うんですね。それを気付かせ、認識できるかというところになってくると思います。 本人のポテンシャルは非常に高いものがありますし、あの身体の大きさであれだけスピードがあって、アジリティがあってというのは、なかなかいない選手。でもサッカーはそれ以外の準備のところで大きく差が出ますし、そこのところをしっかり学んでいってほしい。1試合の重みっていうんですかね、そこは若い選手は感じながら成長していくことが重要です。今まで代表に飛び立っていったような選手も、失敗をしながら成長していったので、昨年の守備ラインから今季は顔ぶれが変わっているなかで、誰がリーダーとしてやってやろうという気持ちを出していけるかが重要で、そこに期待しながら見ていきたいです」 名伯楽も認めるポテンシャル。改めてその才能は間違いないが、ここからもうワンランク上に行けるかは、彼の意識にも関わってくるのだろう。 ■プロフィール たかい・こうた/2004年9月4日生まれ、神奈川県出身。192㌢・93㌔。リバーFC―川U-12―川崎U-15―川崎U-18―川崎。J1通算24試合・1得点。攻守で戦える川崎期待の大型CB。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)