CMOSイメージセンサーの展示。従来品（左）、8K×8K正方CIS（中央）、2/3型 33MピクセルCIS（右）［クリックで拡大］

　シャープは2024年9月17～18日、シャープの技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」を開催し、8K×8Kの正方形CMOSイメージセンサー（以下、8K×8K正方CIS）を展示した。 デモの様子。左＝8K×8K正方CISを搭載したカメラで時計や小物を撮影している様子／右＝撮影した映像を大型ディスプレイに投影していた［クリックで拡大］ 　8K×8K正方CISは、光学サイズが5/6型、画素サイズが1.25μmの裏面照射型CIS。シャッター形式はローリングシャッターを採用し、動画フレームレートが60fpsだ。同社従来品である33Mピクセルの4/3型CISよりも小型ながら、性能は向上させている。 　主な用途は、360度カメラや外観検査、AR／VRコンテンツなどを想定している。会場では、8K×8K正方CISを搭載したカメラで時計や小物を撮影し、大型ディスプレイに投影するデモが行われ、時計の細かな傷まで確認できることをアピールしていた。 　担当者は「おおよその開発は完了していて、サンプル提供を既に開始している。顧客からは、画質に関して高い評価をもらっている」とコメント。今後の課題として「CISの高性能化に伴い、データを受ける側の性能を向上させる必要がある」と語った。

「嗅覚」を持ったAIを開発

　シャープは、開発中のにおいセンサー「AI Olfactory Sensor」を展示した。 　AI Olfactory Sensorは、非対称の交流電界を印加し、イオン化したにおい分子の移動速度の差から成分を解析する。一般的にはFA-IMS（Field Asymmetric-wave Ion Mobility Spectrometer）と呼ばれる手法だ。まずは、におい分子を含む空気をポンプで引き込み、プラズマ放電技術でにおい分子をイオン化する。次に、フィルター電極に2種類の電圧をかけることでにおい分子のフィルタリングを行う。さらに、フィルターを通過したイオンの軌道を偏向電極の電界で曲げてディテクタ電極に落とし、電流として検出する。検出した電流値をグラフとして可視化し、独自開発したAI（人工知能）に学習させることで、においの判別を可能にする。 　においセンサー技術では他にも、におい分子を膜に吸着させて計測する方式がある。その場合、吸着した分子を脱離させるために何度も熱を加える必要があることに加え、使用を続けると脱離しにくくなるため、センサーの性能が劣化するという課題がある。一方で、FA-IMS方式では、におい分子がフィルター電極や検出部に吸着することはないため、繰り返し使用できる。 　担当者は、AI Olfactory Sensorについて「同技術では、FA-IMSの素子をガラスのセルで構築している。これは、長年培った液晶ディスプレイの量産技術を応用して実現できた」と説明した。現在は、試作機でにおいサンプルの計測／学習を進めている段階だ。今後は、実用化に向けて筐体の小型化や効率的なサンプリング手法を模索していくという。